埼玉県議会の「子ども放置禁止条例案」はさまざまなハレーションを引き起こした(写真:アフロ)
  • 物議を醸した「子ども放置禁止条例案」だが、埼玉県議会は最終的に条例案を撤回した。
  • 今回の問題が大炎上したのは、親などが外出した際に子どもを自宅に放置してはならないという「禁止」にまで踏み込んでいたため。
  • 貧困や再婚家庭での虐待発生率が高いとしても、虐待を行わない貧困家庭のほうが割合としては多い。そのような属性全体に疑いをかけるのではなく、通報ベースで問題のある家庭は個別に行政が見守るような対応をするしかないのではないか。

(山本一郎:財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)

 割とどうしようもない展開となった自民党埼玉県議団の「子どもへの虐待禁止条例」案、最終的にはしめやかに取り下げられるという結末にはなりました。

 まあ、良かったんじゃないでしょうか。

【参考記事】
“子ども放置禁止”条例案 取り下げる方針 自民党県議団 埼玉(NHK)

 この話が持ち上がった当初から、ネットや自民党関係者の間では「自民党埼玉には馬鹿しかいないのか」と大変な話題となりました。埼玉3区の黄川田仁志さんや5区の牧原秀樹さん、8区の柴山昌彦さんら自民党議員も、次々と出てきては余計なことを言って炎上を繰り返しており、なかなか大変なことです。

 検討されていた子ども放置禁止条例、もちろん目的は子どもの虐待を防ぎたいという動機だったんでしょうが、そもそも国には児童虐待防止法(2000年施行)があります。この法律は昨年も改正され、通告義務と早期発見への努力義務が盛り込まれました。身体や性的虐待に加えて、ネグレクトも対象となっています。

 問題は、これらはおおむね家庭内で行われていることですから、誰かが家庭内で行われている子どもへの性的虐待などを、客観的に見て通報することは困難です。あくまで、子ども自身による相談や告発がベースになるため、友人関係や教師など、周辺の大人による相互確認の中で炙り出すことが求められます。ネグレクトも、「何をもって子どもを放置する虐待とするか」の線引きがむつかしい面もあります。

埼玉県議会の福祉保健医療委員会は「子ども放置禁止条例案」を撤回した(写真:共同通信社)