カザフスタンを訪問しカシム・ジョマルト・トカエフ大統領と会談したロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左、11月9日、ロシア大統領府のサイトより)

プロローグ/ロシアは「戦争経済」に突入

 ロシア(露)では9月1日の新学期から国定歴史教科書が採用され、露V.プーチン大統領の歪んだ歴史観が学校で教えられることになりました。

 日本流に言えば、「紀元は2600年」の歴史観と言えましょうか。

 ロシア経済は「油上の楼閣」です。油価が上がると「油上の楼閣経済」は強固となり、油価が下がると弱体化します。

 ただし、この場合の油価とは、ロシアの主要油種「ウラル原油」(中質・サワー原油)です。

 2022年2月24日のロシア軍によるウクライナ侵攻作戦発動後、欧米メジャーや欧米石油サービス企業はロシア市場から順次撤退。現在ロシア市場に残っているメジャーは仏トタール社のみです。

 筆者は昨年、欧米メジャーがロシア市場から撤退したことを受け、「ロシアでは今後、原油・天然ガス生産量低下は不可避」と断じました。

 気象条件の厳しい海洋鉱区や大掘削深度を必要とする鉱区においては、欧米メジャーや欧米石油サービス企業の参画なしには原油・ガス鉱区の探鉱・開発・生産は困難です。

 当方予測通り、今年に入り原油・天然ガス生産量低下が数字で検証可能になると、ロシアでは原油生産量発表が法律で禁止されました。

 今年3月度から1年間の時限立法で原油生産量は発表禁止ですが、来年原油生産が回復すれば1年間の時限立法で終わることでしょう。

 しかし、生産回復が見込まれない場合、この時限立法はさらに延長されることになると予測します。

 付言すれば、世界最大のガス会社ロシアのガスプロムは今年に入り、自社の天然ガス生産量を発表していません。天然ガスを生産しても輸出先がないので、生産量を削減していることが窺えます。

 この結果、ガスプロムは今年上半期(1~6月度)、赤字会社になりました。

 プーチン大統領は今年10月17日に北京訪問、翌日18日に中露首脳会談が開催されました。

 ロシア側報道によれば、中露首脳会談にてモンゴル経由天然ガスパイプライン「シベリアの力②」構想実現促進で合意した由。

 しかし、両首脳は同建設構想では以前から合意しており、今回の訪中は実質成果ゼロとなりました。

 一方、ガスプロムのA.ミーレル社長は「欧州市場に代替する市場は中国になる」と豪語。

 欧州ガス市場はガスプロムの金城湯池でしたが、欧州市場の代替市場が中国のみになれば、ロシア産天然ガスは中国一国が顧客となり、ロシアの対中資源植民地化・属国化が促進されます。

 換言すれば、中国にとっては熟柿の落ちるのを待っていればよいだけの話にて、「果報は寝て待て」となります。

 筆者がよく受ける照会に、「ウクライナ戦争は実態として戦争なのに、なぜプーチン大統領は特別軍事作戦と呼んでいるのか?」という質問があります。

 ロシアは宣戦布告していません。

 宣戦布告すると「戦争状態」となります。ロシアが戦争宣言すると、ロシアを盟主とする軍事条約CSTO(集団安保条約)に従い、旧ソ連邦諸国の中でこの軍事条約に加盟している国は参戦義務が生じます。

 しかし、条約参加国が参戦するかどうか不明にて、脱退する国・動きが表面化するはずです。

 筆者は、ウクライナ戦争においてロシア軍側に参戦する条約国は(ベラルーシ以外)ないと考えます。

 この場合、対ウクライナ支援を巡り欧米内部で亀裂が生じたように、CSTO内部でも亀裂が生じること必至です。

 アルメニアは既に脱退、カザフスタンも脱退することになるでしょう。

 上記理由にて、プーチン大統領は(実態は戦争ですが)「戦争」と呼べないものと筆者は考えます。

 ロシアは実質戦争経済に突入したので、今後ロシア経済のさらなる弱体化は不可避です(後述)。