韓国で実施された改良型リボンブリッジ(IRB)による渡河訓練(3月15日、米海兵隊のサイトより)

 今、ウクライナ軍のザポリージャ州西部の攻撃(ザポリージャ州西部からアゾフ海までの目標線)は停滞している。

 ウクライナ軍はいったん攻撃を止めて、再編成・補給を行って、次の攻撃の準備中であるようだ。

1. これまでの渡河作戦の兆候

 2023年6月7日、ロシア軍によってカホフカダムが破壊され、ドニエプル川の川下では、ヘルソン市が水没するほどの洪水が発生した。

 その後水位が下がり、歩兵部隊が潜入用のボートを使って、威力偵察や情報収集、拠点づくりを行った。

 ロシア軍の反撃を受け、拠点の規模は縮小したものの、川の三角州や壊れた橋梁下にへばりつくように何とか踏み止まって、確保を続けていた。

英国で訓練中のウクライナ軍海兵隊と潜入用ボート

出典:thenationalnews world europe(2023/08/15)

(図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイトでお読みください)

2.ドニエプル渡河作戦の軍事戦略的価値

 約700キロに広がる両軍が攻防を行っている接触線で、ロシアからの兵站支援が最も遠くて難しく、またロシア軍の防御配備と障害が最も薄いのがヘルソン州のドニエプル川正面である。

 ウクライナ軍の数個旅団級部隊の渡河が達成できれば、その後の作戦は容易になる。

 ドニエプル川渡河作戦が成功すれば、以下の行動が可能になる。

① クリミア半島まで最短距離で到達できる。

② ザポリージャ州西部で防御するロシア軍を背後から攻撃できる。

 このため、ザポリージャ州西部でのロシア軍の防御が瓦解しかかり、ウクライナ軍の攻撃速度は、著しく早まる可能性がある。

③ ザポリージャ州西部とヘルソンで防御するロシア軍は、退路が遮断されて、メリトポリなどの市街地で孤立する。

 このロシア軍部隊は兵站支援がなくなるために、捕虜にならざるを得なくなる。

ドニエプル川渡河作戦とその後の侵攻予想

出典:図は筆者作成(兵器・人物・地形などすべて)。以下同じ