米誌WIRED(ワイアード)は「ハマスの奇襲攻撃は、これまでの攻撃と比較して規模が大きいだけでなく、イスラエルの知らぬ間に計画され、実行されたという事実からも衝撃的だ」と指摘する。イスラエルが収集するハマスに関する膨大なデジタル情報が逆に奇襲計画の煙幕になった可能性があるという。

世界中のあちこちで噴き出す地政学のマグマ

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、イスラエルは電子傍受、センサー、人的情報提供者のネットワークをガザ全域に構築してきた。イスラエルとその近隣諸国はハマスのネットワークを追跡して遮断するために多額の投資を行い、ロケット弾部品の輸送を妨害してきた。しかしハマスは封鎖されているはずのガザに5000発以上のロケット弾を備蓄していた。

 イスラエルは伝統的な情報収集と顔認識やスパイウェアのようなデジタル監視技術を使ってハマス関係者と周辺を厳しく監視している。デジタル化で情報量が幾何級数的に膨張する一方で情報の整理や解析が追いつかない。「ヒューミント(人的情報)とシギント(信号情報)の落とし穴に加えて、イスラエル国防軍も兵站の問題を抱えていた」(WIRED)

 ハマスの奇襲攻撃はウクライナ戦争で浮き彫りになるロシア、北朝鮮、イランなど「悪の枢軸」と、その背後で漁夫の利を狙う中国に有利に働く恐れがある。米国の経済力と軍事力の限界が見えてくる中、地政学のマグマが世界中のあちこちで噴き出している。