次々示された廃線で起きうる問題

 近江鉄道線は約60km、ここに33の駅がある。自治体によっては域内に1駅のみの場合もあれば、複数の場合もある。このため、沿線自治体ごとに近江鉄道線への関わりには濃淡がある。

 そこで、第2回の任意協議会では、10市町から近江鉄道線がなくなった場合の困りごとについて、各自治体から意見を得る機会が設けられた。

 八日市駅をはじめ市内に13駅がある東近江市からは、廃線で生じうる悪影響が次のように列挙された。

  • 自動車交通への転換や送迎バスの増加によって、現在でも朝夕の時間帯の交通渋滞は深刻であるが、さらにそれが厳しくなり、市民生活に対して大きな影響がある。
  • バス運転士の確保問題。市はコミュニティバスの運行委託をしているが、運転士不足が指摘されている。ここに代替バスが入ってくると、運転士確保ができるかどうか心配である。
  • 駅前の賑わいが維持できるのか。東近江市では「中心市街地活性化基本計画」を策定し、八日市駅を核としたまちづくりを進めている。その効果があり、駅を中心として賑わいが再生しつつあるが、廃線になると大きな影響がでる恐れがある。
  • 通学問題。市内に複数の高校があるし、市外の高校へ通学する生徒も多い。これらの高校生の移動手段として近江鉄道線が機能している。廃線になると移動手段だけでなく、通学先にも影響が出てくる。
  • 市内に立地するびわこ学院大学への影響は必至だ。最寄り駅が大学前であるが、これがなくなると少なからず学生、大学経営に影響が出てくる。
  • 観光面での意義も少なくなかった。新八日市駅のように、駅自身が集客効果を持つものもある。近江鉄道線が廃線になれば本市の観光戦略などの抜本的な見直しを迫られることになる。

 また、町内に1駅しかない多賀町は、次のように通勤面での影響を指摘した。大手企業が集う工業団地が町の骨格をなしている自治体ならではの懸念だ。

  • 町外から町内の工業団地への通勤は、路線バスの混雑により近江鉄道線の利用が増加している。廃線になると別の手段を確保する必要が出てくる。快適な通勤が困難になると雇用の確保まで問題が広がる。

 この他にも、「高齢者の通院に使われているのでサポートしないといけない」「通学が困難になると、単に通学の問題ではなく、人口流出につながりかねない」といった意見が表明された。

 実際のところ、この時点では、まだまだ「近江鉄道が自社の努力で存続をするべきだ」という声は自治体の間では少なくなかった。だが、こうして廃線によって生じうる問題を洗い出していくうちに、廃線は決して鉄道会社単独の問題ではないということを各自治体の担当者自身が認識していったように映る。

 各自治体にとって、鉄道存続は目的ではない。問われているのは、近江鉄道線を使っていかに魅力的なまちをつくり上げるか、ということだ。

 なぜ存続しないといけないのか。廃線になると何が問題なのか。

 同様の問題を抱える多くのローカル線にとっても、その役割をあらためて整理することで、沿線自治体をはじめとする関係各プレーヤーが果たすべき務めが見えてくるのではないだろうか。

■参考資料
1)滋賀県:近江鉄道線のあり方検討