都内で開かれた祈禱会で祈るウクライナ避難民の女性(写真:共同通信社)
  • 難民受け入れの後進国と言われた日本だが、ウクライナ避難民については2000人以上を受け入れている。
  • その背景にあったのは、新疆ウイグル自治区における人権侵害をきっかけに、日本政府や与党で人権尊重への取り組み機運が高まっていたため。
  • 労働力人口の減少が進む今、難民を「人的投資」と捉えて包摂していくことは企業価値向上にもつながる。

(玉川朝恵:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社シニアコンサルタント)

 2022年2月以降、ロシアによるウクライナ侵攻は続き、1年半以上経った今も終結の目途は立たない。

 9月にニューヨークで開催された国連総会にはウクライナのゼレンスキー大統領が出席。一般討論演説において「侵略者を打ち負かすための団結した行動」が必要であると訴えるなど、情勢はいまだ混迷を極めている。

 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、ウクライナ国外に逃れ難民となっている人の数は、2023年9月時点で620万人に上る。現代で最多とされてきた2011年以降のシリア難民に匹敵する数だ。

 欧州を中心にウクライナ避難民を受け入れているが、日本でもその数は2000人を超えた。

 日本政府は難民(避難民)の包摂を重要アジェンダとして位置づけるようになっており、姿勢に変化の兆候が見られるが、それは政府に限ったものではない。難民の雇用に取り組む企業も、実は増えているのだ。

 難民の包摂は、企業にとってはDE&I(ダイバーシティ<多様性>、エクイティ<公平性>、インクルージョン<社会的包摂>)の加速だけでなく、イノベーション創出や競争力向上の源泉にもなる可能性がある。難民の包摂が企業価値の向上につながるということだ。

ウクライナ対応は日本の難民受け入れの転換点か

 2023年5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、開催地が広島ということもあり、日本でも関心が高かったことは記憶に新しい。その中で最も注目されたのは、ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃訪問だろう。首脳宣言でも、ロシアによるウクライナ侵攻は大きなテーマだった。

 中でも、ウクライナ侵攻による難民を念頭においた人権侵害についても言及されたことは注目に値する。

「人権、難民、移住及び民主主義」の項で「難民を保護し、避難を強いられた人々や受入国及びコミュニティを支援し、難民及び避難民の人権及び基本的自由の完全な尊重を確保する」と明記された。

G7広島首脳コミュニケ(仮訳)(外務省)

 ウクライナ侵攻を受けて、日本の難民支援の潮目も大きく変わってきた。