年内の衆院解散は困難との見方が広がっているが、岸田首相は果たして(写真:共同通信社)
  • 岸田政権の内閣支持率が急低下している。内閣支持率と与党第1党の政党支持率を足し合わせた、いわゆる「青木率」も危険水域と目される50%を割り込んだ。
  • 「年内解散は困難」との見方が広がっているが、年内解散の可能性が消えたわけではなく、解散時期は①年内、②来年秋の自民党総裁選まで、③自民党総裁選後の3パターンが考えられる。
  • 年内解散を目指す場合のシナリオとして考えられるのは、内閣改造・党役員人事におけるサプライズ演出であり、財政健全化の先送り、ないしは拡張的な財政政策であろう。

(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

5月をピークに急速に悪化する内閣支持率

 内閣支持率は2023年に入り回復方向にあったが、5月頃をピークに急速に低下している。NHK世論調査によれば、昨年11月に33%まで低下した内閣支持率は今年5月に46%まで上昇したが、8月に再び33%まで低下した。この間の不支持率は46%→31%→45%と推移している。

 昨年後半の支持率低下は、旧統一教会を巡る問題が主因とみられる。今年前半の支持率上昇は、旧統一教会を巡る問題への世論の関心が薄れる中、マスク着用基準緩和やコロナ「5類」移行などウィズコロナが進展したことが背景だろう。

 足元の支持率低下については、原因としてマイナンバー問題がよく指摘されるが、保守層の離反や一部議員の不祥事など複合的な要因が影響しているとみられる。

 支持率から不支持率を差し引いたスプレッドは今年8月に12%ptまでマイナス幅が拡大した。菅政権末期の2021年8月に記録した23%ptにはまだ距離があるものの、岸田政権下で最悪となった昨年11月の13%ptや、安倍政権末期の2020年8月に記録した13%ptに近づいている。


拡大画像表示

拡大画像表示