タワマンが都会の新築マンション価格上昇を牽引している(写真はイメージ)

不動産経済研究所が発表している首都圏1都3県の新築分譲マンションの平均販売価格は今年3月に初めて1億円を超え、直近の7月も9940万円と高い水準で推移している。その牽引役とされるのが、最高価格100億円超という東京・港区の「麻布台ヒルズ」などの高級タワーマンションだ。住宅ローン金利の上昇などどこ吹く風で、こうしたマンションの販売は極めて順調という。一方で、近年は富裕層による節税目的のタワマン購入を牽制する施策も相次ぐほか、タワマンにまつわるトラブルが話題になるケースも目につく。変化の狭間で揺れるタワマンオーナーに本音を聞いた。

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

賃貸入居者がマルチ商法で逮捕

「お亡くなりになった方はお気の毒と言うしかない。しかし、ああいう事件があると、同じマンションのオーナーの方々はやはりマンションの資産価値の低下が気になるのではないでしょうか」

 7月に東京・中央区のタワーマンションの一室から猟銃で撃たれた男女の遺体が見つかり、女性が元人気力士の前妻であったことで注目を浴びた。都内の別のタワマンで2室を保有する60代の男性は、自身の体験も踏まえてオーナーの心情を慮る。

 かく言う男性が部屋を所有するタワマンではコロナ禍前、賃貸で入居していた20代の男性が特定商取引法違反の疑いで逮捕されたことがあった。大学生や若手のビジネスマンをターゲットに、暗号資産を使った「モノなしマルチ商法」で億単位の資金を集めていたという。

 マルチ商法の舞台となった部屋では連日、セミナーと称したパーティーが開かれていたらしい。貸し主は当時男性が親しくしていた同世代のオーナーだった。逮捕された男性は地方の名士の息子で、このオーナーからは知人の口添えで部屋を貸すことになったと聞かされていた。

「オーナーが犯罪に関わっていたわけではなく、ただ部屋を貸しただけ。しかし、タワマンの中では誰が所有する部屋で事件が起きたのかあっという間に噂が広がり、いづらくなったオーナーは半年後に持っていた部屋を全て売却して姿を消しました」

 事件の後、タワマンのラウンジでたまたま地権者の一人と出くわしたことがあった。