(英エコノミスト誌 2023年8月19日号)

ドイツに再び輝かしい朝日は昇るのだろうか(写真はブランデンブルグ門)

経済の病は1999年当時とは異なる。だが、効き目の強い「改革」の薬がまた必要だ。

 25年近く前、本誌エコノミストはドイツを「欧州の病人」と呼んだ。

 当時のドイツ経済は東西の再統一、硬直的な労働市場、輸出需要の緩慢な伸びに足を引っ張られ、失業率が2ケタに上っていた。

 そこで2000年代初頭の「アジェンダ2010」と称した数々の改革が実行され、黄金時代が到来した。ドイツは近隣諸国がうらやむ国になった。

 鉄道が時刻表通りに運行されるだけでなく、諸外国を凌駕する高い技術力を背景に輸出大国としても脚光を浴びた。

 しかし、ドイツが繁栄を謳歌する一方で、世界はどんどん変わり続けた。その結果、ドイツは再び諸外国の後塵を拝し始めている。

羨望の的だったドイツの転落

 欧州最大の経済規模を誇るドイツが、経済成長の先頭グループから脱落した。

 2006年から2017年にかけてはほかの大国を上回る成長を遂げ、米国と同じペースを保っていた。

 ところが今では3四半期連続のマイナス成長(あるいは景気の低迷)に陥っており、経済大国のなかでは唯一、2023年通期でマイナス成長に終わる恐れがある。

 しかも、問題は今現在だけのものではない。

 国際通貨基金(IMF)によれば、ドイツは向こう5年間においても経済成長率で米国、英国、フランス、スペインを下回る見通しだ。

 確かに、情勢は1999年当時ほどには緊迫していない。現在の失業率は約3%と低い。国は豊かになり、開かれている。

 だが、ドイツ国民は、この国はちゃんと機能していない、こんなはずではないとますます不満を口にするようになっている。