楽天との協業を巡り亀裂が顕在化

 方向性の食い違いが決定的に顕在化したのは、2018年の「つみたてNISA」導入にあわせて楽天証券との協業を進めようとしたときでした。楽天証券の楠雄治社長とは長期投資を重視する考えで通じる点が多く、「イデコ(iDeCo、個人型確定拠出年金)」がスタートしたときからセゾン投信の商品を販売してもらっていました。

つみたてNISAが始まった頃からクレディセゾンの林野会長との確執が決定的になっていった(写真:アフロ)

 つみたてNISAが始まるまでは基本的に直販を貫いてきました。その方針を一部転換し、ネット証券や地銀など長期投資の考えを共有できる販売会社には投信を卸し始めました。つみたてNISAは積み立てしかできず、販売手数料も取れない仕組みのため、私たちの理念と合致するからです。

 楽天証券は、投信の販売インフラとしてはSBI証券と並んで確固たる地位を築いており、協業の余地は大きいと考えました。iDeCoでの協業はうまく実現できましたが、つみたてNISAのときは事前に林野氏の耳に入り、「楽天なんてとんでもない」と計画にストップがかかりました。楽天グループが手掛けるクレジットカード事業でクレディセゾンと競合していることなどが気に食わなかったのでしょう。

※クレディセゾンはJBpressの取材に「個別の方針や戦略に関する回答は控えさせていただきます」と回答した

 その後、林野氏との関係はさらにギクシャクしたものになっていきました。結局、私が何を大事にしているか、最後まで理解してもらえなかったのかもしれません。親会社と方針が食い違うリスクを痛いほど分かっていたのに、ズルズルと解決を先延ばしにしてしまったことが全ての敗因です。もっと本気でリスク回避の手立てを講じておくべきでした。