前回の金融政策決定会合で記者会見する植田総裁(写真:共同通信社)
  • 7月27、28日に開催される日銀金融政策決定会合。最大の争点はイールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃を含む金融緩和の修正だ。
  • だが、YCCは既に形骸化しており、円金利の情勢に大きな影響はない。YCC撤廃時の円安抑止効果を考えれば、手元に置いておきたいカードでもある。
  • 海外勢が円売りを進めていない現状はYCC修正の好機とも言えるが、そもそもYCCを修正して円高基調になるのかという疑問もある。

(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

円安抑止という観点からは現状維持を予想

 市場の注目する日銀金融政策決定会合が迫っているので、改めて論点整理しておきたい。

 筆者は現状維持を予想している。

 長期金利の維持を目的としたイールドカーブ・コントロール(YCC)はもはや形骸化した枠組みであり、その存在があろうとなかろうと日本の経済・金融情勢がただちに大きな影響を受けることは考えづらい。

 現状、10年物日本国債の利回りは±50bpsだが、そもそも日本国債の変動はその程度のものだろう。YCCがなくなったからと言って円金利の情勢に著しい変化が出るとは思えない。

 しかし、直情的な為替市場はしっかり円高で反応するはずだ(持続性はともかく)。この点、YCCは修正時(本欄ではあるとすれば撤廃を想定、以下同)の円安抑止効果まで考慮すれば形骸化しているとは言えない。

 その円相場は7月半ばに対ドルで137円まで急騰したものの、本稿執筆時点では141円まで戻っているが、年初来安値である145円対比では円高だ。

 この状態を「憂うべき円安」と評価するかどうかは微妙だが、「円安で追い込まれている」とは言えまい。

 資本規制を論外とすれば、円安を止めたいならば金融政策における引き締めか、通貨政策における円買い介入の2経路しかない。

 後者を最後まで温存したいのであれば、前者のカードもむやみに使うわけにはいかない。141円前後は残り少ないカードを使うほどの窮地とは言えないように筆者は思う。