SUGIZOとINORANという新しいツインギター

「初めて手にしたギターはINORANモデルだった」「初めて手にしたベースはJモデルだった」という人は多い。90年代に最も売れたギターとベースは、フェンダーでもギブソンでもなく、ESP(エドワーズ、グラスルーツといった廉価ブランド含む)のLUNA SEAシグネチャーモデルだったと言われたほどである。

 SUGIZOは華麗なギターソロをとってみれば、ハードロック&メタル影響下を感じるが、コードワークやサウンドメイクはニューウェイヴな香りもするし、バイオリンだって弾く。坂本龍一、マイルス・デイヴィス、フランク・ザッパ……敬愛するアーティストの幅の広さを含めて、今まで見たことのない新しいギターヒーローだった。方やINORANはクリーントーンのアルペジオを武器に、LUNA SEAの退廃的でもあり神秘性を深めていく存在だ。そんな2人が織りなすツインギターは、従来のロックバンドとは異なるスタイルだった。

 ツインギターといえば、リードとリズムという役割が一般的だった。通常のツインギターを1人のギターでリアレンジするのは可能だが、LUNA SEAのコピーバンドをやるとなったら、絶対にギタリストが2人いないと再現不可能なのである。BOØWYの布袋寅泰はギター1本でさまざまなサウンドを奏で、最小限編成ロックバンドの硬派なギタリストの存在を掲げたが、LUNA SEAはツインギターでしか成し得ない音楽と世界観を示したのである。

 ギターソロは基本SUGIZOが弾くことが多いが、SUGIZOがリードで、INORANがリズムかといえばそういうわけでもない。2人のプレイスタイルもサウンドもまったく違うために、その役割を明確に分けること自体が不可能、いや、不要なのである。

 ヴィジュアル系ロックバンドにツインギターが多く、リードとリズムといった概念も存在していないことが多いのは、LUNA SEAの影響が大きいからであろう。