BOØWY Special 7inch Box(生産限定アナログ盤)」(2023年3月21日発売)のジャケット写真より

(冬将軍:音楽ライター)

90年代から現在までの、さまざまなヴィジュアル系アーティストにスポットを当て、その魅力やそこに纏わるエピソードを紹介していくコラム。今回は日本独自のロック、“ビートロック”を確立、日本のロックバンドの雛形となったBOØWYを取り上げる。(JBpress)

ロックバンドにおけるひとつの完成形

 BOØWYがなぜ伝説と呼ばれるのか、何がすごかったのか——。

 セールス的な成功を含めた功績はもちろん、その影響力は大きく、多くのフォロワーバンドを生み出した。BOØWYの登場以前以降で、日本のロックシーンは大きく変わったといっても過言ではないだろう。BOØWYはロックバンドにおけるひとつの完成形に到達。そのスタイルはそのまま日本のロックバンドの雛形となった。日本独自のロック、“ビートロック”である。

 音楽性や演奏スタイルはもちろんのこと、クールでスタイリッシュなビジュアルに至るまで、現在に至る多くの日本のバンドがやっていることは、BOØWYによってスタンダードになったことが多い。それは後年のヴィジュアル系シーンにも大きく影響を及ぼしている。

カッコつけるためのメイクへ

 ヴィジュアル系の歴史を語る上で、よく話題になるのが「パイオニアは誰なのか」。しかし、これには正解などはない。90年代中期にヴィジュアル系ブームが起こる以前、自分たちのことをヴィジュアル系だとは名乗るバンドはいなかったからだ。ただ、“パイオニア的存在”がいたほうがわかりやすいのは確かだ。

 どのバンドをパイオニアとして考えるかは人それぞれだろう。私は著書『知られざるヴィジュアル系バンドの世界』(星海社新書)で書いているが、ヴィジュアル系史の“基準”をBOØWYとしている。

「BOØWYがヴィジュアル系のパイオニアである」と言うつもりはないのだが、BOØWYを基準にするとヴィジュアル系史がわかりやすくなるのだ。BOØWY人気が80年代バンドブームを引き起こしたが、それは同時にヴィジュアル系バンドへの影響力も大きかったことを表している。バンドブームはそのままヴィジュアル系シーンの黎明期でもあるからだ。

 BOØWYをヴィジュアル系の基準とする理由は、彼らが“カッコつけの美学”を確立したからだ。どこかイロモノとして見られていたロックバンドの存在をカッコいい存在として世間に知らしめたのである。

 それまでロックバンドといえば、ヘヴィメタ、パンク、ツッパリ、不良・・・どこか社会性や組織的なものからの反抗という立ち位置でもあった。他者と違うものを追い求める表現は、音楽のみならず、ファッションにも及び、派手な服装と奇抜な髪型、そしてメイクと、自分の個性をアピールするためにそれはエスカートしていった。聖飢魔II、米米CLUB、爆風スランプが“ソニー3大イロモノバンド”などと言われたように、どこか俗世と離れた存在であったメイクをしたバンドは、“オケバン=お化粧バンド”とも呼ばれていた。

 しかし、髪を逆立て、目張りを濃くしたメイクにジャンポール・ゴルチエの衣装を纏ったBOØWYの存在は、ニヒルでナルシストなカッコつけの美学で魅了していくという、これまでのロックバンドとは異なるものだった。BOØWYは他者より目立つためのメイクから、カッコつけるためのメイクへと昇華したのである。まさにヴィジュアル系の根底にある、アイデンティティともいえるものだろう。

 その革新性ともいうべき、センセーショナルなスタイルはビジュアル面のみならず、音楽性を含めたバンドとしてのスタイルにおいても同様だった。