(写真:つのだよしお/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

教団の進出に地元住民が反対運動、しかし市は拒否できず

 統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の進出と新たな施設建設に、反対の意向を示す地元住民や自治体の駆け引きが、いよいよ異常な事態となってきている。

 統一教会が、東京都多摩市に約6300平方メートルもの広大な土地を購入したことが明らかになったのは、今年3月の多摩市議会で、市が認めたことが発端だった。教団は昨年の4月に、この土地を取得していた。

 すると、教団の拠点になることを懸念する周辺住民や市民有志らが、教団の撤退を目指す「統一教会はNO! 多摩市民連絡会」をこの4月に設立。教団の進出に反対する署名活動を始めた。教団を「反社会的団体」と指摘し、土地が国士舘大学多摩キャンパスと都立永山高校に隣接することから、「若者が勧誘の標的にされる恐れがある」としている。

 また、これに先立ち多摩市は、阿部裕行市長の声明をホームページに掲載。そこで以下のように表明している。

「旧統一教会については、その組織のあり方についての反社会性、個別の活動についての違法性又は不当性が指摘されているところであり、この不動産取引で同団体が本市内に活動拠点を設けることについては、市民の方々の平穏な暮らしが脅かされるのではないかという懸念を示さざるを得ません」

 住民から上がる不安の声。組織の反社会性を指摘する自治体。こうした事態を受けて、東京都も6月8日に国に対して、住民の安全・安心な生活を確保するため、速やかに統一教会の運営実態の把握と、適切な対応などを求めた緊急要望を行なったばかりだった。