1on1で重要な「傾聴」について、多くの上司は勘違いしている(提供:アフロ)
  • ・1on1を成功させるには、二つのポイントがある。部下が自分の課題を課題として認識していることと、上司が部下の話をきちんと傾聴すること──の二つだ。
  • ・特に、「傾聴」の意味を勘違いしている上司は少なくない。1on1における傾聴(active listening)とは、静かに耳を傾けるのではなく、興味を示しながら積極的に相手の話を聞くこと。
  • ・コーチングやカウンセリングの専門的な技術よりも基礎的な応答技術を磨く方が効果的

 上司と部下の間で行う1対1の定期的なミーティング「1on1」。評価のための人事面談とは異なり、部下の成長を支援するための人事施策として知られている。2012年にヤフーが人事制度の目玉として取り入れて以来、人材育成のトレンドの一つになった。今では、多くの企業で導入が進む。

 もっとも、1on1が一般的になる一方で、現場の上司からは「どう接すればいいか分からない」「うまく機能しない」という声もしばしば挙がる。なぜ1on1が機能しないのか。ヤフーの人事責任者として1on1を導入した本間浩輔氏(Zホールディングス・シニアアドバイザー)が見る、1on1の違和感とは──。

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◎第1回:大企業の7割が導入する1on1ミーティング、うまく機能しないのは誰のせい?
◎第2回:「1on1が機能しない」と嘆く企業に欠けている上司が部下の話を聞くという風土

(本間 浩輔:Zホールディングス株式会社 シニアアドバイザー)

 1on1が広く認知されるにつれて、企業から講演会や研修を依頼される機会が増えました。私の場合、90分、120分の講演は基本的にお断りしていて、180分、あるいは丸一日の講演と演習をベースにしています。

 なぜ長めの時間をもらうのかというと、講演の初めに、僕の1on1をデモで見てもらったうえで、解説し、実際にやってみて難しさを経験する。これが一番早いから。僕がやってきた1on1と、自分たちの1on1の違いを肌で感じて、自分でやってみると、その後の話もすっと入ると思うんです。

 デモでは、必ずその会社の方に出てきてもらいますが、「話しやすかった」という反応になることが多い。

 僕の1on1がうまいということを言っているわけではありません。そのポイントの話をしたいと思います。

 1on1を成功させるには、二つのポイントがあります。一つは、部下が自分の課題を課題として認識しているということ。もう一つは、その課題を上司が“傾聴”するということです。

「え、そんな簡単なこと?」と思うかもしれませんが、この簡単なことができていないのが現実です。

 まず、「部下が自分の課題を課題として認識している」ということについて。これは、言ってしまえば前提条件の話です。