今年5月23日、NATOのバルト海航空警備任務に参加するルーマニア空軍のF-16とポルトガル空軍のF-16(写真:AP/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

「近代化された空軍を構築するには相当な時間がかかる」

[ウクライナ中部クリヴィー・リフ発]米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は6月1日、フランスを訪れ、米国製F-16の供与を念頭に「ウクライナが近代化された空軍を必要としていることは誰しも認めるところだ。しかし相当な時間がかかるだろう」と述べた。2024~25年になってもF-16は実際には使えないだろうとの見方が強い。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が出席した広島での主要7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせ、ジョー・バイデン米大統領はF-16を含む第4世代戦闘機でウクライナのパイロットを訓練する計画への支援を表明。今年初め「ウクライナがF-16を必要とするとは思わない」と否定的な見方を示していたバイデン氏は方針を180度転換した形だ。 

 ウクライナ空軍は昨年2月時点で旧ソ連時代の主力戦闘機MiG-29、Su-24、25、27など計約120機の戦闘機を保有しているとみられていた。

 しかし、その5~6倍とされるロシア空軍の航空戦力に対抗するには同一機種で200機の多目的戦闘機が必要とゼレンスキー氏は主張してきた。ターゲットは最新鋭ステルス機F-35に置き換えられるビンテージ機のF-16だった。

 ミリー議長によると、F-16の訓練規模、場所、飛行戦術の種類など詳細な計画は、米国と英国、F-16の提供を約束したオランダなど同盟国の間で練られている。英国とオランダは「ウクライナのF-16調達を支援する国際連合」をつくることで合意、ベルギー、デンマークも同調した。しかし米国が直接F-16を提供するかどうかについては明言していない。