先端の半導体製造装置が手に入らないと中国は半導体立国になることは難しい

 2022年10月、米国のジョー・バイデン政権は半導体の輸出管理規制を強化し、先端半導体の技術や製造装置、関連人材について、中国との取引を事実上禁じた。

 この規制強化によりスーパーコンピューターやAIに用いられる高性能半導体の輸出に加え、先端半導体を製造するための米国製製造装置の輸出が原則禁止となった。

 米国輸出管理法は、「再輸出規制」を行っている。

 このため、米国産の技術等を使用して製造した製品は、他国へ輸出することができない。しかし、自国の独自の技術で製造した製品は、他国へ輸出することができる。

 そして、米国は半導体製造装置に独自の技術を有する日本とオランダにも輸出規制に同調するよう求めてきた。

 2023年1月27日、日米とオランダの3か国は、先端半導体製造装置の一部の対中輸出制限で合意した。

 事情に詳しい複数の関係者によれば、ワシントンで2日間行われた協議が1月27日に妥結した。

 これにより、先端半導体製造能力増強に動く中国の野心の阻止を目指すバイデン政権が2022年10月に発表した半導体・同製造装置の対中輸出規制は、主要サプライヤーである東京エレクトロンやニコン、ASMLホールディングスを擁する日本とオランダを加えた多国間の枠組みに拡大したことになる。

 関係者によれば、対中輸出制限の合意を公表する予定はなく、日本とオランダが法整備を完了するのに数か月かかる可能性もある(出典:ブルームバーグ2023年1月28日)。

 2023年3月8日、オランダ政府は、リーシュ・スフレイネマーヘル外国貿易・開発協力相が上院議長に宛てた書簡の中で、特定の半導体製造装置の輸出規制を強化することを明らかにした。

 新規制を2023年夏までに公表することを目指している。なお、この書簡の中に中国についての言及はない。

 また、2023年3月31日、日本政府は、先端半導体の製造装置など23品目を輸出管理の規制対象に加えると発表した。

 外為法の省令を改正し、輸出には経産大臣の事前許可が必要になる。

 パブリックコメントの募集を経て5月に公布、7月の施行を予定している。ただし、西村康稔経産相は同日の閣議後の記者会見で「特定の国を念頭に置いたものではない」と話した。

 上記のように、中国の反発に配慮しつつも、日米とオランダの3か国は、先端半導体製造装置に関する対中包囲網の構築を目指している。

 さて、半導体は各国の産業競争力や安全保障を左右する。

 現在、米中は半導体戦争の渦中にある。米中半導体戦争の現状等については、拙稿「『米中半導体戦争』の現状と未来、世界への影響を徹底解説」(2022.11.21)を参考にされたい。

 バイデン政権は、半導体の輸出管理規制の強化で、中国の半導体サプライチェーンを遮断し、中国のハイテク産業育成戦略である「中国製造2025」の達成を阻止しようとしていると筆者は見ている。

 本稿では、日本およびオランダの新たな半導体製造装置の輸出規制の概要とその影響について述べてみたい。

 初めに日本の新たな半導体製造装置の輸出規制の概要を述べ、次に同輸出規制の日本メーカーへの影響を述べ、最後にオランダの輸出規制の概要と中国への影響について述べる。