ホテルや旅館のスタッフから歓迎される宿泊客とは(写真:アフロ)

国内旅行の需要回復が鮮明になってきた。今年に入って出張や家族旅行などでホテルや旅館を利用する機会が増えたという人も多いだろう。そういう時こそ気にかけたいのが、宿泊客としてのマナーだ。インバウンド(訪日外国人)客のマナー違反が叫ばれて久しいが、実は日本人の中にも「人の振り見て我が振り直せ」と言いたくなる人がいるという。ホテルマンに、宿泊時のマナーや感じのいい客の振る舞いについて聞いてみた。

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

客室の大型テレビをスーツケースで持ち帰る

 5月の大型連休は、JRグループ旅客6社の新幹線と在来線特急、ANAとJALの国内線の利用者数ともに、ほぼコロナ前の水準を回復した。感染症法上のコロナの区分を5類に変更したのに先駆けて4月29日に“水際対策”を全面解除していたこともあり、国内の観光地は日本人客に加え、復活したインバウンド客で賑わった。

 中には、急激な需要の回復にスタッフの手当てが間に合わず、運営に支障を来した宿泊施設も散見された。そうしたホテルや旅館のさらなる頭痛の種になったのが、インバウンド客を中心としたマナーの問題だという。

 筆者の知人が北関東で営む温泉ホテルでも、「大浴場で脱衣籠の上にかけておいたバスタオルを勝手に使われた」「朝食のバイキングで子供が皿の上の食材を手づかみで食べていた」といった苦情が相次いだという。「スタッフがその場に居合わせたのなら注意もできるが、生活習慣や文化の違いもあり、インバウンド客に日本の宿泊施設のルールを徹底させるのは難しい」と知人はこぼす。

 それ以上に困るのが、客室やパブリックスペースに置いてある備品を勝手に持ち帰る宿泊客がいることだという。これはインバウンド客に限らない。

 特に大型連休や夏休みは、部屋着、カトラリー、ドライヤー、スマートフォンの充電器など備品の紛失が多いそうだ。筆者が以前取材した都心のホテルでは、なんと客室に備え付けの大型テレビをスーツケースに入れて持ち去った猛者もいたらしい。