名古屋市の河村たかし市長(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

「突然の河村(名古屋)市長の発言でしたが、事前に話はありましたか」との問いに、独立行政法人水資源機構の中部支社の末松義康・事業部次長は「なかったです」。報道で知ったのかとの問いにも「はい」と率直な答えが返ってきた。

 河村たかし市長の突然の発言とは、2010年から凍結されていた「木曽川水系連絡導水路事業(以後、導水路事業)」を当初の計画とは違う目的で進めたいという方針転換だ。

 2月14日に突如発表し、会見では、「うみゃあ水を揖斐川からと、まあ目的を変えて、僕は名前も変えないかんと言っとります。まあ、『堀川浄水』でもええんですけど、まあ、そういうようなことでございます」と軽妙に語った。

 導水路事業とは、揖斐川の徳山ダム(岐阜県)の水を導水管でつないで、東隣の長良川とさらに東の木曽川に引く計画だ。市長の軽妙な口調とは裏腹に、実施されれば総額890億円が費やされる。この2008年にできた計画が、徳川家康が開削させた『堀川』とどう関係するかを説明するために、話を半世紀以上戻す。

水需要は頭打ち、一滴も活用されず税金だけは投入

 1961年、国は、人口と水需要が増大する地域の7水系(利根川、荒川、豊川、木曽川、淀川、吉野川、筑後川)を水源開発水系として指定。伊勢湾に接近して注ぐ木曽川、長良川、揖斐川は、「木曽川水系」とひとまとめに指定した。

 同年、国は7水系のダム建設を担う特殊法人水資源開発公団を設立した。

行政改革により、2002年に特殊法人水資源開発公団から「水の供給量を増大させない」事業だけを行う組織に改組された独立行政法人水資源機構の中部支社(2023年4月7日撮影)

 しかし、この水資源開発政策は、「無駄な公共事業」だと激しく批判され始めた。