米国の物流を支えるロサンゼルス港で、インフレとサプライチェーン問題について語ったバイデン大統領(写真:AP/アフロ)

(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

「A ROCKY RECOVERY(不安定な回復)」

 4月11日、国際通貨基金(IMF)は春季の世界経済見通し(World Economic Outlook:WEO)を公表している。リスクシナリオとして、「1970年以降、5回(1973・1981・1982・2009・2020年)しか経験のない世界経済成長率の+2%割れとなる確率は20%」との見方も示された。その条件としては、金融不安を受けた信用収縮および株安が重なった場合とされている。

 もっとも、3月と比較すれば、昨今の金融不安は「個別金融機関の問題」という受け止めが進んでいる雰囲気もあり、2023年の世界経済については+2.8%と1月予測から▲0.1%ポイントの下方修正にとどめられている。

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 IMFは特に先進国を名指しした上で、利上げが必要となる高インフレと利下げが期待される金融安定の間で葛藤を抱える中、ハードランディングシナリオがより大きなリスク(a much larger risk)になっていると指摘している。IMF予測としては比較的踏み込んだ言いぶりに感じられた。

 予測値の底割れにこそ至っていないものの、秘めたるリスクの大きさを感じさせる見通しと言って良いだろう。

 今回の見通しの副題である「A ROCKY RECOVERY(不安定な回復)」は簡潔ながら、予測全体に通底するIMFの本音をよく言い表しているように思える。

 個別論点では、第4章の「地経学的な分断と直接投資(GEOECONOMIC FRAGMENTATION AND FOREIGN DIRECT INVESTMENT)」が非常に興味深い議論であった。