(英エコノミスト誌 2023年3月11日号)

人口が急激に減りつつあるロシア。とりわけ若い男性の数が大きく減っている

何十年も続く危機がウクライナでの戦争でますます深刻になった。

 ロシアで人口学的な悲劇が進行中だ。

 この3年間に失われた人口は通常想定される水準を約200万人上回った。戦争、病気、国外脱出の結果だ。

 15歳のロシア人男性の平均余命は5年近く短くなり、ハイチと同じレベルになった。

 2022年4月に産まれた子供の数は、ヒトラーに占領された時期のそれと同程度でしかない。

 おまけに、兵隊に取られる年齢の男性があまりに多く死亡したり外国に逃げ出したりしているために、今では女性が男性より少なくとも1000万人多くなっている。

 戦争はこうした問題の唯一の原因ではなく、最大の原因ですらないが、事態をひどく悪化させている。

 西側の推計によれば、ここ1年間におけるロシア兵の死傷者は17万5000~25万人に上る(ロシア側の数字はこれより少ない)。

 国外に脱出することで戦地の殺戮を逃れた人も、教育を受けた若者を中心に50万~100万人いるとされる。

 人口学的な問題がほかになかったとしても、これほど短い期間にこれほど多くの人がいなくなればダメージは大きい。

 実際には、戦争による損失は、縮小し衰える人口にさらに重い負担をもたらしている。

 ロシアは今や、人口学的な衰退という破滅のループに突入しつつあるのかもしれない。

衰退へ向かう破滅のループ

 ロシアの危機の発端は30年前にさかのぼる。

 人口は1994年に1億4900万人でピークに達した。その後は小刻みな変動を繰り返しながら減少し、2021年時点では1億4500万人だった。

(国連によるこの数字は、ロシアが2014年に併合して国家の統計に加えたクリミアの住民240万人を含んでいない)