ロシアの原油輸出拠点、コズミノ港に停泊する石油タンカー(資料写真、2022年12月4日、写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油価格は年初来安値の水準で推移している(1バレル=70ドル台)。

 振り返れば、ロシアがウクライナに侵攻すると原油価格は今年(2022年)3月に1バレル=130ドルに高騰した。当時は「150ドルを突破し史上最高値になる」の観測がもっぱらだったが、その後100ドル割れし、5月下旬に再び120ドル超えとなった。

 ところがその後ウクライナ危機が長期化するにつれて、西側諸国のロシア産原油を禁輸する動きが活発化したものの、原油価格は夏以降、下落傾向が続いた。ウクライナ侵攻開始後の原油価格の高騰は「ロシア産原油が市場から消える」という供給不安から生じていたが、この「ロシア・プレミアム」が次第に尻すぼみになったからだ。

 タンカーで世界各地に搬送できる原油の市場調整のスピードは速かった。欧州に輸出されていたロシア産原油がインドや中国に回り、欧州は中東や米国産の原油を調達したことから、市場での供給不安は大きく後退した。

ロシア産原油を購入し続ける中国、インド

 主要7カ国(G7)、EU、豪州は12月5日、ロシア産原油の価格上限制度を導入した。上限を超える価格で取引される原油の輸送について保険の付保を禁じることで、ロシアの戦争遂行能力を削ぐことが狙いだ。