希望退職の増加で「おじさん」の肩身は狭くなる一方(写真:アフロ)

11月22日、損害保険大手のMS&ADホールディングスは2026年3月末までに6300人の人員を削減する方針を発表した。定年退職による自然減や新卒採用の削減のほか、割増退職金を支払う早期退職も実施するという。コロナ禍の直撃もあるが、バブル期入社組が50代半ばに突入しているという背景もあるだろう。日本の企業社会では、働きの悪い中高年社員に冷たい視線が注がれている。報酬に見合わず、重たいコストでしかない中高年社員のリストラは景気の良し悪しに関係なく、さらに進むことになる。

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

社員の半数を解雇したツイッター

 米テスラのCEO(最高経営責任者)イーロン・マスク氏が10月にツイッターを440億ドル(約6兆2000億円)で買収しました。

 この資金をマスク氏の個人資産で賄ったことに目を見張りましたが、それよりも買収手続きが完了した早々に、約7500人いる社員の半数を解雇したことに驚きました。

 その後も、「長時間労働に同意するか、退職するか」の選択を社員に迫るなど、苛烈な施策を繰り出しています。ツイッターと同様に、アマゾン・ドット・コムやメタ(旧フェイスブック)でも11月に相次いで1万人規模の大量解雇を発表しました。

 これほど厳しい経営判断は日本ではありえないことで、日米の違いを感じさせられる事象です。自由や幸福を追求する際の価値観や方法論が異なるのだろうと思います。

 米国のような極端な合理主義が日本社会に馴染むとは到底思えませんが、一方で日本人に通底した曖昧で寛大過ぎる考え方や物事の決め方が、自由競争の妨げになり国際社会から遅れをとっているのではないかという言説もあります。

 サントリーホールディングスの新浪剛史社長は、ローソン社長時代の2013年に開催された政府の「産業競争力会議」で次のように述べています。