(英エコノミスト誌 2022年4月16日号)

「戦後のウクライナは“大きなイスラエル”になる」とヴォロデミィル・ゼレンスキー大統領は言う(写真は3月31日、写真:AP/アフロ)

「コサック魂、いざという時に結束する国ウクライナ」(前編:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69801

 1991年の独立以降、ウクライナの地域間・民族間の違いを活用しようとする試みは、ロシア人の扇動家によるものかウクライナ国内の勢力によるものかにかかわらず、結局は実を結ばずに終わっている。

 オレンジ革命で権力を手にしたビクトル・ユシチェンコ氏が、20世紀半ばのナショナリストでナチスに協力したこともあった反ユダヤ主義者のステパン・バンデラをウクライナの英雄として称えた時には、ロシア語が話される東部のみならずウクライナ全土のリベラルな知識階層から反発を買った。

 足元の戦争により、あらゆる分断の思考が鎮められた。

 ジャーナリストで政治家のセルゲイ・ラクマニン氏は先日、戦争は「我々全員を麻酔なしで縫い合わせた」と記した。

 今ではロシア語話者、ユダヤ人、クリミアのタタール人、そしてウクライナ語話者が、生き残るために、そして自分の土地で生きたいように生きる権利のために一丸となって戦っている。

 最も大きな代償を払っているのは、断固抵抗している南部と東部のロシア語話者たちだ。

 ウクライナは存在せず、存在するべきでもないとの信念に基づいてプーチン氏が始めた戦争は、その信念の逆が真であることを証明している。

 軍の臨機応変な対応は常に、ウクライナの自衛の一部をなしてきた。

 ネストル・マフノの軍が展開した「タチャンカ」――機関銃を備え付けた馬車――は、今や世界中の低強度紛争で見かける「テクニカル」――銃砲を据え付けたトヨタ自動車などのピックアップトラック――の前身だ。