たちまちアイドルになった彼は短期間の日本滞在の間にレコーディングし、デビュー。テレビ出演にCM撮影まで行なっている。阿久悠作詞の「永遠にふたり」をたどたどしい日本語で歌う彼。わからない歌詞を懸命に歌う姿が痛々しい。ハードスケジュールをこなすため、彼は薬物を与えられたと告白。

世間に弄ばれ、捨て去られ、忘れられた少年

 パリでは映画の出資者たちが待っていた。ヴィスコンティの映画のスタッフたちもまた、ほとんどゲイだったという。彼は関係者たちの知り合いのさまざまな大人たちに引き合わされた。高級なランチや豪華なディナー、贈り物とわずかなお小遣いと引き換えに、大人たちは自慢のトロフィーのように、「あの映画の美しい男の子」を従えて、連れ歩いた。結局、映画が作られることはなかった。

© Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021

 世間から少しずつ汚され、見放され、忘れられていった、かつての美少年。一度は死亡説も流れた。だが、彼はその後、演劇学校を出て、いまはミュージシャン、俳優として暮らしている。

 日本でもヒットした北欧を舞台にしたホラー映画『ミッドサマー』(現在はNetflixで配信中)にいまのビョルンの姿を見ることができる。痩せ細り、髪を伸ばしたどこか異様な老人は、顔を隠すように覆っているひげのせいか、あの美少年の面影はどこにもない。

© Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021