(英エコノミスト誌 2021年10月23日号)

石炭火力発電所に頼ってきた中国は大きなリスクに直面している

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 2006年公開のドキュメンタリー映画「Manufactured Landscapes(邦題:いま ここにある風景)」に、風景写真家のエドワード・バーティンスキー氏が撮影許可を求めるシーンがある。

 中国・北京に近い工業都市の天津で、出荷を待っている中国産の石炭の山々を撮りたいというのだ。

 案内人は怪訝な顔を見せるが、写真家の助手が「カメラのレンズと先生の目を通すと、あの山は美しく見えるんでしょう」と言って納得させる。

 この推測は完全に正しいとは言えないことが分かる。

 写真家のレンズを通してとらえられた石炭の山の連なりは黒ずんでいて、悪魔を連想させる姿をしている。必ずしも美しいわけではないが、その莫大な量には畏敬の念を覚える。

5%を下回る水準まで成長が減速

 これらの写真を眺める限り、中国でこの燃料が不足するようなことは想像しがたい。だが、ここ数カ月間、かの黒いピラミッドはそれほど大きなものではなくなっている。

 中国で発電用燃料のほぼ3分の2を占める石炭が不足していることが、過去10年で最悪の停電を招く一因になった。

 そしてその停電は経済成長に打撃をもたらしている。

 バーティンスキー氏の案内人は、空が薄暗く汚れていることの言い訳として「中国経済は非常に速いペースで発展しているんです」と語る。

 だがそれも、もう完全に正しくはない。

 中国経済は三重のショックに見舞われている。

 上記の停電だけでなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックや、不動産デベロッパーの恒大集団の資金繰り問題によって悪化した不動産業界の減速にも悩まされている。

 10月18日に発表された第3四半期の経済成長率(前年比)は4.9%で、前期より低下した(図参照)。