しかし、そのような都市と農村という図式は大きく変化した。若者が職を求めて農村から都市に移動したことにより農村の人口が減少し、その一方で農民工の子として都市で生まれた人々が増えたためだ。中国には戸籍制度があり、農民戸籍であると就学などにおいて不利益を被る。ただ現在、北京、上海、広州、深圳の4つの都市を除けば、農民が都市戸籍を取得するハードルは低くなっており、多くの農民が都市戸籍を手に入れている。都市戸籍を持つ人は全人口の半分程度になった。その結果、農村は老人が住む場所になっている。

 農村が貧しい地域であることに変わりはないが、現在は貧しいと言っても食料の入手に困ることはなく、テレビ、冷蔵庫、洗濯機なども普及し、自動車を持つ人も出始めている。もはや中国に絶対貧困と呼ばれる地域はない。

 そんな中国でなぜ格差が問題になるのであろうか。昨今問題なっているのは、都市における格差である。中国人の約半数は都市に住んでいる。北京や上海はそれぞれ2000万人都市となり、それに広州や深圳、南京、成都、杭州といった大都市の人口を加えると、その合計は約2億人になる。

 都市と農村の格差の激しい中国では、大都市に住んでいるだけで幸せと思われてきたが、その大都市の中に深刻な格差が生まれた。住宅価格が高騰したからだ。中国の不動産バブルは2000年頃から顕在化したが、これまでバブルが崩壊することはなかった。その結果、中国の不動産価格は天文学的と言ってよいほどにまで高騰してしまった。北京や上海ではごく普通のマンションが日本円で2億円以上もする。中心部に行くのに交通機関を乗り継いで1.5時間から2時間程度かかる郊外のマンションでも、1億円程度である。大都市に住む中国人の平均収入は日本人の約半分だから、庶民にとってマイホームは高嶺の花になってしまった。

密集するように建てられた北京のマンション群(資料写真、2018年9月27日、写真:ロイター/アフロ)

富裕層の愛人が社会問題に、なぜバレたのか

 ここまでのことは、日本でもよく知られた話だ。今回、知人が語った話はその続きである。

 不動産バブルは不動産や金融に関わるごく一部の人々に巨万の富を与えた。日本でも1980年台後半に金融や不動産に関連した会社の経営者が短時間で巨万の富を得て「バブル紳士」などと呼ばれた時代があったが、現在の中国の状況はそれを遥かに上回っている。