選手村の食堂(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

(羽田真代:在韓ビジネスライター)

 ご承知のように、東京五輪に出場するために日本の地に足を踏み入れた韓国選手団は独自の給食支援センターを設置した。「日本の食材は放射能に汚染されている可能性があり危険だ」というのがその理由である。

 現在、韓国のナショナルトレーニングセンターでは栄養士や調理師など28人が、1日平均425食の弁当を作って希望する選手などに支給している。韓国選手団の発表によると、7割以上の選手が利用しているという。

 韓国の“放射能フリー弁当”には日本からの批判が相次いでいるが、韓国オリンピック委員会・選手村運営部長は「福島のことがあるからこれを運営しているのではなく、選手たちの十分な栄養摂取を通じて競技力向上を企てるため」とメディアに釈明。「米国も食支援センターを設置して約32トン、7000食を用意している」「2018年平昌冬季五輪では、日本も“GーRoad Station”を設置し、日本選手に日本食を提供していた」と反発した。

 米国や日本が五輪開催の際に選手向けに食事の場を提供していたのは開催国の食材が危険だからではなく、選手のコンディションを考えたためであり、韓国の放射能フリー弁当の目的とは完全に異なる。仮に放射能を懸念していたとしても、「選手の健康管理のため」と大人の回答をすればいいだけの話だろう。

 韓国五輪代表の栄養士を務めるハン・ジョンスク氏は、「今回は新型コロナの問題や福島産の食材に敏感な人が多く、より力を入れている。さらに、この国の気候は非常に高温多湿であり、食中毒を防ぐため衛生面でも細心の注意が必要だ」とロイターの取材に答えている。大韓体育会や韓国政府なども、「選手村での食事には福島県産の野菜や海産物が使用されているため気をつけるように」と注意勧告しており、“食”を政治利用していることは明白だ。