前回に引き続き、福島第一原子力発電所の事故が食品に与えた影響について見ていく。

 放射性物質とともに食品に大きな影響を与えたのは風評被害だ。茨城県産の農作物は消費者の買い控えが続き、大きな損害を受けた。

 そもそも、「風評被害」とは何だろうか。東洋大学社会学部メディアコミュニケーション学科の関谷直也氏が発表した「『風評被害』の社会心理」が参考になる。

 風評被害とは、「ある事件・事故・環境汚染・災害が大々的に報道されることによって、本来『安全』とされる食品・商品・土地を人々が危険視し、消費や観光をやめることによって引き起こされる経済的被害」のことを指す。

 風評被害は次のような過程を経る。

 初めに、「人々が不安に思い、商品を買わないだろう」と市場関係者が考えた時点で、取引拒否、価格下落という経済的被害が生じる。

 次に「経済的被害」「人々の悪評」を政治家や評論家などが想像する。そして、経済的被害、政治家などの認識、街頭インタビューの「人々の悪評」などが報道され、社会的に認知された「風評被害」になる。

 さらに、報道量が増大し、多くの人々が「忌避」する消費行動を取る。政治家などの「想像上の『人々の心理・消費行動』」が実態に近づき、「風評被害」が実体化する。

 今回の原発事故でも、出荷制限されていない茨城県産の野菜が小売業者から返品されたり、中央卸売市場の入荷量が一時期半分以下に落ち込むなどの風評被害が起きた。

 茨城県農林水産部長の宮浦浩司氏は、マスコミの取材に対して「例年の出荷額から推計すると、出荷制限された3品目で6億円程度、風評被害によるその他の青果物の価格下落が47億円程度で、50億円を超える数字になる」と述べている。