(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

(篠原 信:農業研究者)

 学校は制服のスカート丈にやかましく、就職活動はみんな真っ黒なリクルートスーツ。親御さんも我が子が「普通」からはみ出さないかと不安。これはもう「普通病」「普通恐怖症」「普通シンドローム」と呼んでよいかも。

 小学校から高校まで、先生たちは生徒に「普通」を求め、枠から外れることを嫌う。「普通」でない子は扱いにくく、集団指導が成立しにくい。「普通」のいい子ばかりならスムーズに授業が進められる。そうした便宜的な理由もあるのかもしれない。

ドカベンに「普通」はいない

 では、いつから学校は「普通」を求めるようになったのだろうか。

 漫画『ドカベン』(水島新司作)では、岩鬼など不良がケンカばかりしている姿が描かれている。面白いことに、当時の教師がケンカをやかましく咎める様子はない。当時の証言を聞いてもどうやらそうだったらしい。生徒に「普通」でいることを求めていなかった。

『ドカベン』の連載は1972年から。この漫画を読んでいると、今でいう「普通」のイメージが見当たらない。岩鬼もトンマも山田太郎もみんな個性的で、「普通」であろうとするような登場人物が出てこない。この時代には「普通シンドローム」はなかったようだ。