通訳のアズミと連絡をとり、港近くにあるホテルに入った。アズミはフランスのテレビ局のパレスチナ人カメラマンだ。アズミと翌日からの打ち合わせを終え、ベッドに入った夜中、突然、大音響が響き渡り、窓ガラスが激しく震えた。外を見ると海上でタグボートのような小型船が引っくり返って燃えていた。カメラを持って部屋から出ると、

「危ないぞ! さっきイスラエルのミサイル艇が追って来て、ミサイルをぶち込まれたんだ。ハマスが武器を運んできたのを見つかっちまったんだ」

 と建物の壁から首だけ出して成り行きを見ていたホテルの従業員が言った。このような事は珍しくもないそうだ。

「アラファトはクソだ」

 翌日、アズミの紹介でハマスの戦闘員だという3人の若者に会った。

 若者たちは屋台でコーラを飲みながら陽気に喋った。

「パレスチナ人はシオニスト(ユダヤ人)に土地を奪われ、家を壊され、命さえ奪われてきたんだ」

「いつかシオニストたちをパレスチナの土地から追い出して、地中海に沈めてやる」

 彼らは言葉の最後に必ず「アッラー・アクバル(アッラーは最も偉大である)」と付け加える。やはりこの土地争いは神を巻き込んでの聖戦なのか。

 彼らがイスラム原理組織といわれるハマスに入ったのは、その主張に共感したからだという。ハマスは当時の主流派であったPLO(パレスチナ解放機構)の柔軟路線を否定し、侵略者イスラエルへのジハード(聖戦)を徹底すると宣言していた。

 彼らにとってパレスチナ全土は先祖が神から与えられた、守るべき土地なのだ。妥協策など認めない。