「安全保障は国でしょう!」

 揉めている論点を単純化すると、次の二つに集約される。
①〈注視区域のゾーン幅(1キロメートル以内)〉と、②〈特別注視区域内の土地売買にかかる事前届出〉だ。特に、後者②への慎重派の抵抗が大きい。調整上のハードルは一段高いという。

 公明党副代表の北側一雄元国交大臣もこの点を指摘していた。わざわざ東京・市ヶ谷の防衛省周辺を例に、「なかなかの規制だと私は思う」「事前届け出ではない方法で目的を達せられないか」(毎日新聞2月25日)。法案を通すための交換条件を早い段階から指示していた。

 ここは、提案側の自民党新藤義孝元総務大臣に踏ん張ってもらいたい。急ぐあまり、緩めの線で手打ちしたりすれば、後々に禍根を残す。骨抜き法案になる。

 筆者は、実効性ある新法にするための肝は事前届出制度だと見ている。その理由は地方自治体とのバランスだ。

「安全保障は国でしょう」

 首都圏の首長がいうとおり、安全保障は国がやるべき範疇である。しかし、すでに条例によって事前届出を課す「上乗せ条例」を用意した自治体がいくつもある。言いようのない渺とした外資の土地買収への懸念を払しょくするためだ。

 その数は18道府県(2012~現在)に及ぶ。北海道、埼玉県、群馬県、茨城県、山梨県、山形県、長野県、岐阜県、富山県、石川県、福井県、新潟県、徳島県、秋田県、滋賀県、宮崎県、三重県、京都府である。これらの条例は水源地を守るためで、監視が必要な区域を自治体が定め、土地売買に際し、事前届出を義務づけさせている。

 本来ならば、法律によって国が安保的観点からやるべき対策を、これだけの数の自治体が条例によって課す体系となっているのである(事後届出に効果がないことは、国土法第23条の実態が証明している)。