日本で初めて大量感染が確認されたダイヤモンド・プリンセス号(2020年2月11日撮影、写真=アフロ)

 新型コロナウイルス感染症が騒がれ始めた2020年初めから、国民には心身の非常事態が続いている。

 経済活動も停滞し、長引けばボディブローとして日本国家の疲弊(極論すれば沈没)につながりかねない。国会では法改正で強制や罰則が議論されようとしている。

 日本に比して桁違いに感染者や死者が多い(数十倍~数百倍)米欧諸国では一時的に医療崩壊が懸念されたところもあったが、日本では1次感染の時以来ずっと「医療崩壊」が叫ばれている。

 反政権側に立つメディアが政権いじめと視聴率稼ぎに、真実に探りを入れることなく囃し立て、国民を扇動している面もあろう。

 しかし、コロナ患者を受け入れている病院などのパニック状態や喧騒ぶりは確かであるが、日本全体を俯瞰した現実はさっぱり分からなかった。

 新型コロナウイルスがいかなるものかはっきりせず、中国の武漢の病院から伝わってくる映像情報からは「感染症2類相当」*1指定もやむを得なかったし、医療従事者の対処も大仰なものにならざるを得なかった。

 これらの指定に基づく対処で、日本は「世界の奇跡」とまで言われるほど桁違いに少ない感染者や死者しか出さなかった。

*1=2類は結核やSARS。ちなみに1類はエボラ出血熱やペストで、インフルエンザは5類

自粛要請を受け入れた「恐怖心」

 コロナ患者を受け入れた病院や医療従事者がパニック状態になったことは確かであろう。ゾーニングや普段あまり活用の機会がなかったECMOが引っ張り出されるなど、状況の急変と現場の混乱をもたらしたからである。

 日本の医療従事者や医療器具などは充実しており、世界の最先端にあると聞かされてきたので、一部のパニック状態を以って「医療崩壊」というにはあまりに短絡しすぎのように思えていたが、ダイヤモンド・プリンセス号の船内での混乱状況が「医療崩壊」の前兆に見えたのは確かであろう。

 日本医師会の中川俊男会長は「必要な時に適切な医療を提供できない」状況を医療崩壊といっている。この定義からは、船内の状況はまさしく医療崩壊に等しいものであったかもしれない。

 しかし、その後の米国やイタリア、発生源の中国などでは渡航往来の制限や外出・営業の禁止など罰則を伴う施策が講じられ、国によっては都市のロックダウンなども行うが、日本はどこまでも「要請」による「自粛」でしかなかった。

 医療崩壊を叫びながら要請・自粛で済ます状況に感覚のずれも感じられた。