(星良孝:ステラ・メディックス代表取締役、獣医師)
ドイツのビオンテックと米国ファイザーは、新型コロナワクチン候補の承認申請を日本で行ったと12月18日に発表した。
承認申請は大幅な前倒しとなり、海外での使用実績などが条件になる「特例承認」を目指す形になりそうだ。前例のない型破りの承認になるのは間違いなく、ウイルスが蔓延する現状を見れば待ったなしだろう。今後、他のワクチンの承認申請も続くと見られるが、共通した課題もある。ウイルス制圧に向けての道筋をあらためて考察する。
本格審査から1カ月で承認出す海外の国々
筆者は以前の記事で、日本における新型コロナワクチンの臨床試験が海外と比べて半年近く遅れている状況を指摘した。単純計算では、2021年6月が最速の承認と想定。その上で、前倒しの手法として、欧米での緊急使用許可の状況を踏まえた特例承認や海外データの活用が考えられると解説した。
特例承認の条件として、海外で医薬品が既に使われているという状況が必要だったが、欧米で承認に至ったことで、その条件は満たされた。新型コロナウイルス感染症を効能・効果とする医薬品は特例承認の対象疾患となり、ワクチンにも適用できるならば条件に当てはまるだろう。今回、実際に特例承認を目指し、しかも海外のデータを利用する方針となっている。
報道においては2月に承認の判断がなされると指摘されている。後述の通り、既に通常のルートをたどっていない点から言えば、もはや1カ月後の1月に承認が出ても不思議はない。欧米の承認審査の進捗も横目に見れば、欧米と日本との違いがどこにあるかという問題になる。
最速で緊急使用許可を出した英国の場合、企業発表や米CNNの報道によると、10月から当局との調整を重ね、本格的な審査に11月23日から入った。承認が下ったのは12月2日で、接種開始は12月8日だ。
このほか米国では、11月20日に申請が出され、12月11日に承認されている。欧州連合(EU)では10月6日から当局との調整が始まり、11月30日に申請が出され、12月1日から審査開始している。報道によると、12月29日までに審査完了を目指すとされる。いずれも正式な承認申請から審査にかかった期間は1カ月程度となった。ファイザーによると、これまでに緊急使用許可を出した国は、英国や米国のほか、カナダ、メキシコ、サウジアラビア、シンガポール、バーレーン、クウェートと拡大している。スイスも承認を発表しており、その数はさらに増えるだろう。
日本でも従来、製薬企業と審査機関である医薬品医療機器総合機構(PMDA)などとの調整は進められ、今回の承認申請に至っている。海外の国々と同様のプロセスであり、基本的に緊急の対応を迫られる点も同じだ。
では、日本において違う点は何かと言えば、大きく3つある。