モスクワ近郊のドモデドボの町にあるクリニックで「スプートニクV」を注射器に充填する医療従事者(写真:ロイター/アフロ)

(山田敏弘:国際ジャーナリスト)

 12月8日、ついにイギリスで新型コロナウイルスのワクチン接種がスタートした。米ファイザーと独ビオンテックが開発した新型コロナウイルスワクチンである。

 2020年は中国発の新型コロナウイルスが全世界に拡散、大混乱の1年となったが、年末になってようやくワクチン接種が始まったことで、事態は新たなステージに移ろうとしている。

巨大製薬企業が繰り広げるワクチン「覇権争い」

 これまで各国がワクチン開発を急いできたが、アメリカでも14日からワクチン接種が始まった。これからワクチンの普及が大きな話題になっていくだろう。

 中国も、急ピッチでワクチン開発を進めてきており、現在は複数が治験の最終段階にある。中国がワクチン開発を急ぐ理由は、自国民のコロナ感染防止だけでなく、他国に供給し、その国との関係緊密化に役立てたいと考えているからだ。

 だがそんな中国製ワクチンには有効性や安全性を疑問視する声が絶えない。中国製のワクチンは現在、ブラジルやペルー、UAE(アラブ首長国連邦)やトルコ、インドネシアなどで治験が進められている。しかしペルーでは、中国医薬集団(シノファーム)が実施していた治験で、64歳の被験者にギラン・バレー症候群に似た症状が現れたことで、治験が一時中断される事態となっている。現在、ワクチンとの関連性を調査しているとのことだが、場合によっては中国の「ワクチン外交」が軌道修正を強いられることになるかもしれない。

 このように欧米のメガ・ファーマ(巨大製薬企業)や中国の製薬企業が鎬を削る新型コロナ用のワクチン開発だが、もう一国、存在感を見せている国がある。ロシアだ。

 取材を進めてみると、ロシアの製薬関係者が、日本の市場をターゲットにもしていることが判明した。