1939(昭和14)年2月生まれの81歳。和歌山県御坊市出身で、実父は県議会議員を務めている。中央大法学部政治学科を卒業後、遠藤三郎元建設相(旧静岡2区)の秘書を11年務め、県議2期を経て1983年の衆院選で初当選を飾る。44歳だった。以来連続当選12回、勤続37年。当選同期に甘利明自民党税調会長、伊吹文明元衆院議長らがいる。

 90年代末まで政局の表には登場してこなかった遅咲きの政治家である。93年に小沢一郎氏とともに自民党を離党し、新進党、自由党、保守党などを経て2003年に自民党に復党した。新進党、自由党時代には小池百合子東京都知事と関係を深めており、10年間の「非自民党」生活で培った人脈は、後にさまざまな場面で生きることになる。

 出戻り組に厳しい自民党内で二階氏が出世できた最大の理由は、選挙対策と国会運営で抜群の才能を見せたからである。

 二階氏が一躍全国区の知名度を持ち、政界での存在感が高まったのは2005年である。復党したばかりの04年、二階氏は選挙の現場責任者である総務局長を拝命。推薦したのは当時の武部勤幹事長だった。05年5月、小泉純一郎首相の強い意向で衆院郵政民営化に関する特別委員会委員長にも就任し、野党に配慮した丁寧な委員会運営で混乱回避に成功する。

 9月の衆院選では、総務局長として「刺客」作戦を陣頭指揮し、空前の圧勝劇に貢献した。

 第1次安倍政権では国対委員長として次々に法案を成立させ、安倍首相の信頼を勝ち得ている。第2次安倍政権が発足すると、衆院予算委員長として戦後最速で予算を成立させ、与党の幹事長として臨んだ2017年の衆院選も大勝に導いた。

 選挙対策と国会運営において、二階氏以上の技量、実績を持っている現役政治家はいない。権謀術数に長けた権力者のイメージが先行するが、選挙(ガチンコ勝負)と国対(寝技的な根回し)における能力は群を抜いている。

政策も二階流

 政策面においても独自のセンスと視点を持っている。

 例えば、災害対策に力点を置いてインフラ整備を推進する「国土強靭化」は二階氏の専売特許である。野党時代の自民党が東日本大震災の甚大な被害を踏まえ、二階氏を中心に具現化していった路線だ。国土強靭化は「土建政治」との批判をものともせず、今では政府の災害対策の代名詞として定着した。これは二階氏の政治力に負うところが大きい。

 二階氏の災害対策に対する意識の高さは特筆に値する。2016年12月22日から23日にかけて、新潟県糸魚川市で大規模火災が発生した。出火元はラーメン店だったが、強風にあおられて火が広がってしまった。死者は出なかったものの、二階氏はこの大規模火災に対する対応が重要な政治判断を伴うものだと瞬時に見抜いた。それまで地震にしか適用されてこなかった「被災者生活再建支援制度」をこの糸魚川市の火災案件にも適用するように主張したのだ。すでに政府・与党内で絶大な発言力を持っていた二階氏の根回しで被災者生活再建支援制度の適用がすんなり決定し、12月31日には二階氏自ら関係議員を連れて現地入り、自治体の要望を聞いている。大晦日でも仕事に取り組む二階氏の姿勢に、地元住民らが感激したのは言うまでもない。