6月6日、渋谷で行われた抗議デモでは、アンティファの旗を掲げる参加者の姿も見られた(写真:Nicolas Datiche/アフロ)

(山田敏弘:国際ジャーナリスト)

 6月10日のことだ。日本各地の入国管理局の外国人在留総合インフォメーションセンターに、「アンティファ」を名乗る人物から、こんな「爆破予告」の電子メールが届いた。

<私はアンティファの活動をしている者だ。6月12日15時30分に、外国人を虐待している入国管理局と渋谷警察署の施設内で手榴弾2個を爆破する。爆破に失敗した場合は、1時間後に入国管理局と渋谷警察署で関係者を包丁で斬りつける>

 この脅迫については本サイトでも爆破予告日の前日である11日にお伝えしたが、結局、警察当局などの厳重な警戒もあって、幸いなことに何も発生しなかった。いうまでもなく、これはテロ行為である。

(参考記事)【警戒】12日午後、アンティファが渋谷を爆破予告
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60885

 アンティファのメンバーを名乗ったテロ予告は、これまで日本ではなかったと言っていい。現在、世界各地で危険視されているアンティファの存在がクローズアップされているが、実は数年前からここ日本でもその存在が確認されている。日本の情報組織はその実態を掴むべく、情報収集と分析(インテリジェンス)活動に乗り出している。

 そこで今回、情報関係者らへの取材から、日本政府が「日本版アンティファ」の実態をどう分析しているのか迫ってみたい。

トランプ大統領も「アンティファの工作員」を警戒

 まず改めて、そもそもアンティファとは何なのかを説明したい。アンティファ(Antifa)とは、「アンチ・ファシズム」の略で、極左組織のことを指す。指導者やきちんとした組織をもたない過激思想者の集まりであり、人種差別や性差別などに対して抗議活動を繰り広げる。そしてメンバーの中には、抗議デモなどでの過激な暴力行為や破壊行動も行うことで知られている。

 もともとナチス・ドイツやイタリアのムッソリーニなどの台頭に対抗する社会主義的な集団が起源だ。そこからアメリカなどにその活動は受け継がれていき、2016年にドナルド・トランプ米大統領を支持する白人至上主義者やネオナチが活動を活発化させたことで、それに対抗するアンティファも注目されるようになった。

 そして現在改めてそのアンティファが話題になっている理由は、アメリカを中心に大きな騒動になっている黒人男性ジョージ・フロイドさん死亡をめぐる抗議行動だ。全米で起きている抗議デモに紛れて、アンティファが暴力的な活動をしていたと批判されているのである。ドナルド・トランプ米大統領も抗議デモに「アンティファの工作員」が関与しているかもしれない、とツイートしているほどだが、現在のところアンティファがどこまで深く抗議デモに関与しているのか、まだ判然としていない。