2つ目の課題は、緊急事態に対応できるような政府の仕組みづくりです。象徴的には憲法を改正して「緊急事態条項」を入れ込むということになります。

 今回、新型コロナウイルスの毒性はそれほど強いものではありませんでしたが、もしも将来、「感染したら即死」のような強毒性を持った感染症が広がったら、社会の混乱は今回のような程度では済みません。生物・化学兵器が使われる事態などの戦争・テロへの備えも考えておく必要があります。最悪の事態の際には、政府の権限で極端に私権を制限するなどの仕組みが不可欠です。そういう仕組みが整備されていないと、予想外の感染症や戦争、天災などが起きた時に、日本社会がフリーズしてしまう可能性がある。これが今回のコロナではっきりわかったことだと思います。

 そういう最悪の事態も起こり得るんだということを肝に銘じたうえで、万が一の時には政府が強制力を持って対応できる仕組みを作り上げておくことが不可欠だと思います。できれば「抜かずの宝刀」で終わってほしいわけですが、万が一の備えとしてとりあえず「宝刀」は用意しておかなければならないのです。

日本の産業構造の旧態依然さも浮き彫りに

 3つ目の課題は景気対策・経済構造の改革です。コロナの影響により、中長期的に日本経済はかなり落ち込むことになることがほぼ確実ですが、深刻なのは日本の打撃の大きさです。新聞報道などによれば、先進国の1~3月の企業の売り上げ減を見ると、日本は最悪で、8割減になりそうということです。それに対してアメリカは3~4割、ヨーロッパは7割程度です。

(参考)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58763990S0A500C2MM8000/

 なぜこうした差が出てくるのかといえば、日本では、他国に比して新しい産業が育っていないからです。

 例えばアメリカは、従来型産業を中心にコロナ禍での経済ショックは小さくはないのですが、そうした中でもAmazonやZoomやNetflixなど、危機下での「巣篭り消費」に対応したサービスを提供できるIT系企業が逆に急成長しています。日本にはそうした企業があまりありません。目立つのは、「あつまれ どうぶつの森」がヒットしている任天堂くらいでしょうか。

 そう考えると、短期的な景気対策はもちろん、アフターコロナ・ウィズコロナの社会情勢に適応したテクノロジー対応、経済構造の改革を積極的に進めていかなければなりません。コロナ危機前から、例えばSociety5.0などの標語を掲げて施策を進めるなど、日本政府も手をこまねいていたわけでありませんが、残念ながら、諸外国に比べて、テクノロジー導入のスピードは遅く、コロナ危機の痛みも相対的に軽いので、益々遅れを取りそうな気配すらあります。

 そうした中、目に見える形での起爆剤の一つになりうるのが、前々回に本欄で書いた「新・首都機能移転論」です。最新のテクノロジーを思いきり投入した新都市を作ってしまう。今国会で審議されている「スーパーシティ法案」とも親和的です。そうした起爆剤からさらに新しい技術、サービスの誕生・成長を促していく。そういう仕組みづくりが必要になります。もちろん、需要創出という意味での景気対策にもなります。

(参考記事)コロナ危機に大胆な経済対策を!新・首都機能移転論
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59902

 コロナは日本の社会的な課題を浮き彫りにしました。感染のピークが過ぎた今こそが、その課題解消に取り組む好機です。アフターコロナ・ウィズコロナの時代に日本がよい社会を築いていけるかどうか、まさにこれからの時期の取り組み方にかかっていると言えるのです。