(廣末登・ノンフィクション作家)
暴力団の勢力が衰退するとともに、半グレによる事件が増えているように思える。暴力団というオオカミが、暴力団排除条例(暴排条例)で身動きが取れないため、半グレという野良犬の活動領域が拡がった。とりわけ、オレオレ詐欺の火付け役は半グレであった。
溝口敦氏の著書『詐欺の帝王』をみると、当時は半グレ予備軍のチーマー等が様々な詐欺に関与していた様子がうかがえる(文藝春秋、2014年)。このチーマーやカラギャン(カラーギャング)、暴走族などの不良が、やがて「半グレ」とカテゴライズされていった。
半グレとは何者なのか
石垣島に半グレが進出し、繁華街で悪質な客引きや店舗への脅迫が相次いだ2019年9月、琉球新報は、同月14日の新聞紙面で、半グレを以下のように定義している。
<半グレ 暴力団などに所属せずに犯罪行為を行う集団。元暴走族や同じ出身地域の先輩後輩でつながるメンバーで構成されている。違法賭博や特殊詐欺などの犯罪行為で資金を得ているとみられる。得た資金で合法的に会社経営を行っているグループもいるとされる。暴力団と一般人の中間を意味する造語で「半分グレてる」や黒と白の間を意味する灰色(グレー)などが命名の由来とされている>
この琉球新報による半グレ定義にケチをつけるつもりは筆者には毛頭ない。しかし、十把一絡げ的な「半グレ」というネーミングが、「半グレについて何だかわかりにくい感」を作り出している。だから、今年7月に放送されたNHKスペシャル『半グレ 反社会勢力の実像』が、制作者の意図から離れ、彼らを若い視聴者に宣伝する結果となったのかもしれない。
実際、他のメディアでもこの番組に登場した「半グレ」について、「高級ブランド品で固めた自身のコーデや毎晩飲み歩く派手な姿を(インスタに)投稿し続ける・・・『今風』で、不良漫画から飛び出してきたようなアウトローといった印象を視聴者はもったはずだ」と述べられている(NEWSポストセブン 8月17日付け記事)。