多様な働き方へ対応した評価方法は、どのようにして生まれたのか。

(小林 麻理:ライター、社会保険労務士)

 多様な人材活用を掲げ、週4日や時短勤務の従業員が正社員として働くITコンサル企業のライフ&ワークス。同社の設立母体となるオデッセイでは、前編で触れた評価制度を含め、従業員の給与や成長、働く環境などに着目した「社員環境満足度」の要素を定義し、その実践を目指している。

 このように、「社員が環境に満足すること」に両社の社長を務める秋葉尊(あきば・たける)氏が着目し、そのための制度設計を意識し始めたのは10年以上も前のことだという。後編では、その経緯をインタビュー形式でお伝えする。

【前編】「 作業データと生産性で時短・週4日社員も公平に評価 」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58303)

教育や書籍ではコンピテンシーは高められない? 

――「社員環境満足度」に着目し、さまざまな施策を行われてきたきっかけは、何かあったのでしょうか?

秋葉尊氏(以下敬称略) 我々の企業活動の理念であり目標は、人を育てるコンサルティング会社として「お客様に満足いただけるサービスを提供する」ということです。それを実現するための方法として、コンサルタントのナレッジ整備や教育機会の充実など、さまざまなことを考えました。

 同時に、それらはいずれも手段であって本質的なことではないように私は感じていました。そして突き詰めると、コンサルタントのコンピテンシーを高めることが、お客様満足につながるのではないだろうか、というふうに考えるようになりました。

 コンピテンシーとは、「高い成果を継続的に発揮するための行動特性」と私は理解しています。コンサルタントであれば、プレゼンテーション力や表現力の高さなど、お客様や周囲の人から優秀だと評価されているコンサルタントが共通で持ち合わせているものです。そこで、コンピテンシー評価をまずは取り入れました。

 ただ、今度は「そのコンピテンシーを高めるにはどうしたらいいのか」ということで壁に直面したのです。当時、専門家も含めてさまざまな人に相談しましたが、「持って生まれたものに近いので、教育や書籍を通じて高めるのは難しい」と言われることがほとんどでした。

オデッセイとライフ&ワークス代表取締役社長を務める秋葉尊(あきば・たける)氏。