An-158型機 An-148型機の胴体を延長したモデル。経営不振の中、これだけの航空機を開発した実力は立派だが、生産数はあまり伸びなかった。

 しかし、それでもAn-148の生産数は年間数機レベル。ロシアでの生産分を入れても年間10機を超えることはなかった。

 一定の軍用機の需要もあり、スホーイスーパージェットを年間20機程度作るロシアの航空産業に対し、アントノフの復興は低調なレベルに留まった。

 そして、2014年のウクライナ危機以降、ロシアとの関係が悪化したことが、アントノフにとどめを刺した。

 ロシア製部品の使用やロシアとの共同生産が不可能になり、細々と続いていた航空機生産も停止に追い込まれた。

 そして、アントノフもウクロボロンプロム(ウクライナの軍事産業を統合した企業)に吸収されて、独立した企業としては消滅したとされる。

 書き方があいまいなのは、今でも独自の社長がいるようであり、唯一の優良資産であるアントノフ航空はこれまでどおり重量物の輸送で活躍しているからである。

 現状、アントノフは存在しているのかどうかすらも分からない状態にある。

 アントノフは仕掛中の航空機を1機とか2機とか仕上げる可能性がある。しかし、残念ながら同社が航空機を本格的に製造することは、今後はないのではないかと心配される状況にある。

翼のない飛行機を作ったアントノフ

 優れた技術力を持ちつつも、同社が復活できなかった理由は2つある。一つは、自社で航空機の製造・開発を完結できないことであり、もう一つは航空機を生産する組織的活動が崩壊していることである。

 アントノフの航空機生産は、ソ連各地に存在する航空関連企業と共同で行われていた。例えば、An-124、An-225、新型の中型輸送機An-70は主翼をウズベキスタンのタシュケント航空機製造会社で製造していた。

 この工場はソ連崩壊後すぐにアントノフ向けの主翼生産ができなくなったようだが、2013年に航空機生産そのものを店じまいしている。

 もちろん、主翼がなければ航空機生産ができないが、主翼に限らず同じような状態に陥っている部品は少なくないようだ。