「本流トヨタ方式の土台にある哲学について、「(その1)人間性尊重」「(その2)諸行無常」「(その3)共存共栄」「(その4)現地現物」という4項目に分けて説明しています。
先回に引き続き、「(その4)現地現物」について説明します。
「現地現物」というと、筆者は、今から約400年前にピサの斜塔からの落下速度の実験を行ったガリレオの故事を思い起こします。
当時のヨーロッパは、ローマカトリック教会が絶大な権力を握っていました。聖書の教えや、古代ローマの文献が絶対的に正しく、それに反することを言う者は異端者として宗教裁判にかけられ、火あぶりの刑に処せられることもありました。
そんな時代に、古代ローマの大哲学者、アリストテレスの「物体の落下速度はその重さに比例する」という学説に対して、ガリレオは異を唱えました。ガリレオは、重さの違う鉛の玉をピサの斜塔から同時に落とし、地面に同時に着くことを実験して見せました。その実験によって、それまで約2000年間も誰も疑わなかったアリストテレスの学説の誤りを証明した、というお話です。
ガリレオの故事は、「偉大な哲学者の学説でも、間違いはある。ガリレオのようにおかしいと思ったら勇気を持ってそのテーマに立ち向かい納得する結論を得よ」と、私たちに教えてくれています。
「現地現物」の考え方は全くこれと同じです。
つまり、「『先人の教え』はよく学び、理解して、知識として頭に入れておけ。しかし、知識の状態では使い物にならない。自分の体験と照らし合わせたり、実際に試してみたりして、納得して自分の身体の一部にせよ。このことを『合点がいく』『腑に落ちる』という。この状態になって初めて『先人の教え』は自在に活用できるようになる」という考え方です。テレビの番組名にあるように「ためしてガッテン」が大切なのです。
「なぜ」を繰り返す先に「納得」がある
これは言い換えると、先人の教えといえども、納得するまでは信じるなというコトです。