(佐藤 けんいち:著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表)
今年2018年は「明治150年」であると同時に「日仏交流160周年」の記念すべき年である。だが、日本におけるフランスのイメージは急速に悪化している。それは、立て続けに発生し、今なお着地点が見えない2つの事件が、日仏両国で交差しながら進行中だからだ。
2018年も押し詰まってきた11月19日、日本の日産自動車と三菱自動車、フランスのルノー3者の会長を兼任していたカルロス・ゴーン氏が逮捕され、フランス政府が出資しているルノーによる日産支配の構造が一般人の目に明るみになった。それだけではない。フランス側の当事者であるマクロン大統領が、12月1日から始まり現在もなお継続中の「黄色いベスト」運動のデモと暴動で窮状に立たされている。
この2つのニュースが連日メディアで流されているので、フランスのイメージが悪化するのは避けられない状況にある。
だが、もともと日本人はあまりにもフランスを知らなさすぎたのである。日本人はフランスの芸術・文化には慣れ親しんでいるが、フランスの政治体制についてはほとんど関心がない。実はフランスという国は中央集権の官僚国家であり、警察国家である。もう記憶が薄れているかもしれないが、南太平洋で核実験を強行した国だ。こういった側面だけを見たら、およそ一般の日本人が憧れたりうらやましいと思ったりする存在ではないはずだ。おそらく例外は官僚だけではないか。日本の官僚にとってフランスの官僚は羨望の対象である。その理由については、おいおい見ていきたい。
とはいえ、せっかくの機会である。この機会にフランスというものをしっかりと見つめてみよう。よく知ったうえで、友好関係を深めていけばいいのだ。
もはや、かつてのように日本人が一方的にフランスに憧れるという時代ではない。日本のアニメやマンガを愛する若者は多く、彼らは日本に熱いまなざしを注いでいる。マンガを読みたいから日本語を学ぶというフランス人も少なくない。