中国人も気がついていない監視の実態

 習近平が総書記になってから、教科書における文化大革命に対する記述が変化したことはよく知られている。否定的な文言が消えて、扱いが小さくなった。

 文革によって父親である習仲勲が失脚し、自身も陝西省の田舎に下放され苦労したのに、なぜか習近平は文化大革命を嫌悪していない。ちっとドンくさくい習近平は下放で経験した田舎暮らしや、質素を旨とする生き方が嫌いではなかったようだ。だから、派手な生活をおくるファン・ビンビンさんが許せなかったのかもしれない。

 経済が低迷し対外膨張政策も上手く行かない中で、習近平は第2の文化大革命を開始した。徹底的に民衆を管理し、文句を一切言わせない体制を作ろうとしている。それは経済成長よりも統制に重きを置いた社会である。鄧小平の始めた改革開放路線の真逆。だから文化大革命なのだ。

 今度の文化大革命は「デジタル文化大革命」になる。デジタル技術がフルに活用される。既にグレート・ファイア・ウォールを築いて海外からの情報を徹底的に遮断し、かつ膨大な数の監視カメラを設置して国民の監視を強めている。

 習近平政権は新疆ウイグル自治区に対して、実験的に「デジタル文化大革命」を開始した。そこでは、住民は当局によって徹底的に監視され、少しでもおかしな行動があると、徹底的に「習近平思想」の再教育が行われる。このことは日本ではあまり報道されていないが、欧米では新疆ウイグルでの人権侵害は大きなニュースになっている。