3つの環礁(東沙環礁、北衛灘環礁、南衛灘環礁)で構成されている東沙諸島は、東沙環礁最大の島である東沙島以外は満潮時には水没してしまう。そのため、中国のように人工島を建造しない限り、人間が居住できるのは東沙島だけである。

 東沙島には台湾本島との交通を確保するために、1550メートル滑走路を有する東沙空港が設置されている。現在のところ、台湾空軍の輸送機が就航しているほか、沿岸警備隊が民間航空機をチャーターしているだけで、一般の人々のための航空便はない。港湾施設は建設されておらず、小型船が使用できる桟橋があるだけである。

 このような東沙島には、常駐している台湾軍ならびに沿岸警備隊の施設以外にも、国立中山大学の研究施設(生物学、生物化学、海洋学)や公共図書館が設置されている。このほど、その研究施設の装置や施設そのものを充実させるための予備調査が実施された。

 これは、2022年までの4年計画で南シナ海での科学研究施設を充実させるという台湾政府が打ち出した政策に則るものであり、明らかに中国の南シナ海掌握行動に一矢報いようという非軍事的反撃とみなすことができる。

太平島:海洋気象観測施設をさらに充実

 本コラムで継続的に紹介しているように、南沙諸島はまさに中国が軍事的に制覇する寸前の状態になりつつある。

 実は台湾、フィリピン、マレーシア、ベトナムは、中国が7つの人工島を建設して“王手”をかける以前から南沙諸島にそれぞれ1カ所ずつ飛行場を確保していた。すなわち、中国はかつては南沙諸島の軍事的コントロール競争に出遅れていたわけである。しかし、着々と準備を進めていた中国は、2014年から人工島の建設を開始し、あっという間に7つもの人工島を誕生させ、それら全てに軍事関連施設を設置してしまった(下の図)。

南沙諸島に建設された中国の人工島
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