実は、この観点から注目している世界的アーティストがいる。英ロックバンド「クイーン」のギタリストで天文学者のブライアン・メイ氏だ。彼は天体物理学博士であり、プラネタリーディフェンスの活動も行っている。メイさんは「はやぶさ2」ミッションに注目し、リュウグウの画像が発表されると、「立体視(3D)画像を作りたいからデータが欲しい」と連絡をしたという。“はや2”チームが複数の画像を送ると、すぐに立体視画像を作り上げたそうだ。「今後も協力したい」とメイ氏は“はや2”チームにエールを送っている。

ギタリストで天文学者のブライアン・メイ氏。リュウグウの立体視画像を作成。JAXA記者会見時の映像から。

NASAの小惑星探査機も、コマ型小惑星に向かう

 小惑星探査で世界を牽引し、未踏の領域を切り開く日本だが、NASAの探査機「オサイリス・レックス(OSIRIS-REx)」も現在、別の小惑星ベンヌに向かっている。奇しくもベンヌもコマ型で、広義のC型(正確にはB型)小惑星。到着は今年秋の予定だ。

 はやぶさ2はリュウグウ表面に着陸機やローバー(探査ロボット)を降ろしたり、人工物を衝突させてクレーターを作ったりなど多彩な探査を行うが、NASA探査機はサンプルリターンのみ。サンプルを持ち帰るのは2023年の予定と“はや2”より後だが、大量の試料をとる(80g~2kg目標。はやぶさ2は1g未満)のが特徴だ。

 同時期に2つの探査機が、コマ型C型小惑星に向かう。「小惑星のどこが同じでどこが違うかを調べることで、多くのことが分かる。1つだけ見ても分からない。似ている2つを比べるのは科学としてとても良い戦略。競争もあるが、それ以上に協力してやっていきたい」(渡邊氏)

小惑星探査機はやぶさ2は、タッチダウンしてサンプルをとる(想像図)。表面に岩塊が多く、着陸地の選定は難しくなるだろう(提供:JAXA)