写真左より対談者の庭山一郎氏、小島英揮氏、飯室淳史氏とビッグビート代表取締役 濱口 豊氏

 昨年(2017年)、大好評を博したビッグビート主催のBtoBマーケターの祭典「Bigbeat LIVE」が、今年も8月1日に開催される。今年はBtoBマーケティングの重鎮3名がホストとなり、登壇者を交えたトークセッションが繰り広げられる予定だ。イベントの開催に先立ち行われた、ホスト対談の模様をお届けする。

部分最適する限りマーケターは評価されない

庭山一郎氏
1962年生まれ、中央大学卒。1990年9月にシンフォニーマーケテイングを設立。データベースマーケティングのコンサルティング、インターネット事業など数多くのマーケティングプロジェクトを手がける。著書に『究極のBtoBマーケティング ABM(アカウントベースドマーケティング)』(日経BP社)など

庭山一郎氏(以下、庭山氏):僕が大学院で教えていて思うのは、BtoBマーケターはマーケティングを学びたい意識はあるものの、”何をどこまで学ばなければならないのか”というのが分からないという人がとても多いことですよね。会社も同様で、マーケティングをやらねばならぬ、強化せねばならぬという思いはあるものの、何をどこまでやれば戦えるのか、そもそもどうやって土俵に上がればいいのかが分からないんですよ。

 何をすればいいのか分からないから、とりあえずフィリップ・コトラーの本を読んでみるんだけど、3ページも読んだら眠くなる。それくらい悩めるマーケターが多いので、”少なくともマーケターはここまで自力で勉強しなくてはいけない”とか、”会社としてここまではインフラや組織を整備しなければ、その先にはいけないよ”といった道筋をつける必要があると思いますね。

 僕の肌感覚では、日本のマーケティングに携わっている人たちは、みんなすごくがんばっているんですよ。でもきちんと評価されない。その理由は簡単で、部門最適だから。Webの担当者は必死にページビューを上げてセッションを稼いでいるし、オウンドメディアの担当者は定期購読者を増やす努力はしているんだけど、それぞれがどう売上に紐付いているのかという相関が見えないから、評価しようがないんですね。

 だから、マーケターが部分最適で仕事をしている限り、絶対に評価されないんです。自社の製品・サービスの領域で、リードジェネレーションやブランディングから、年間いくらのパイプラインに入れるんだという設計が全体最適でできないといけませんよね。

小島英揮氏
PFU、アドビシステムズなどでITのマーケティング職に従事した後、アマゾンウェブサービスジャパンではマーケティング本部長を務める。現在はStill Day One 合同会社代表社員。また複数の会社と協業しパラレルマーケター・エバンジェリストとして活動する。

小島英揮氏(以下、小島氏):マーケティングを俯瞰できている人は、極端に少ないですよね。小さい会社だと視座の高さがないし、大きい会社でも分業になっているから、高い視座でやれる人がいない。

庭山氏:日本企業のマーケターが全体最適で設計したり、俯瞰的に見られるようになるには、ある程度のマーケティングのベーシックな理論や体系が、絶対に必要になるんですよね。

小島氏:間違いないですね。あと日本のマーケターに足りないのは会社へのアスク(要求)です。だからいつまで経っても営業支援部のままになってしまう。マーケティングは経営にほぼ直結しているので、アスクをしないから自分で仕事のコントロールができないんですよ。