人口減少・過疎化が急速に進行する中、日本各地で公共交通機関(特に路線バス)の不採算路線からの撤退が相次いでいる。これによって“生活の足”を奪われた人々の都市部への流出は拡大し、地域の過疎化がいっそう加速化していく。
しかし、地域の創生が「待ったなし」の状況になっている今、インフラを担う事業者がこのような後ろ向きの姿勢で良いのだろうか?
そうした声に応えるように、「会社として地域に貢献しろ」という先代(父親で創業者)の「遺言」を胸に、不採算路線再生に顕著な実績を挙げ、それを地域の創生へと結びつけている事業者がいる。埼玉県川越市に本社を置くイーグルバスの代表取締役・谷島賢氏(64)である。同社のビジネスモデルは今やラオス人民共和国に輸出され、同国に路線バス事業革新を起こしつつあるが、「前編」では、同氏を一躍有名にした川越市での事例と、「見える化」を通じた不採算路線再生事例をご紹介したい。
“小江戸”川越の成功の立役者
イーグルバスは、日本の民間旅行会社の先駆的存在イーグルトラベル(1950年~)を設立した先代が、1980年に創業したバス会社である。谷島氏は、2000年に事業を承継し、社長に就任。資本金5000万円で、現在、年商約10億円。保有バス数は118台。売上構造は、送迎バス(企業と福祉)が5割強、路線バスが約3割、観光バスと高速バスがそれぞれ約1割である。
「1978年に大学を卒業し、東急観光(現在の東武トップツアーズ)に勤務していたのですが、父から“バス事業をやるから帰ってこい”と言われ、家業に就くことになりました」