“バーベキューマーケティング”によってみやじ豚の認知度はまたたく間に上昇した(写真提供:みやじ豚、以下同)

 現代の日本には、社会が抱える課題の克服に使命感を持ち、その実現のためにイノベーティブな取組みを行う人々がいる。ソーシャルアントレプレナーと称すべき人々である。

 10年余にわたって「1次産業を、かっこよくて感動があって稼げる3K産業にする」活動に邁進してきたみやじ豚・代表取締役の宮治勇輔氏(39)は、さしずめその代表格の1人であろう。様々なメディアに取り上げられ広く知られる宮治氏であるが、中編では、事業承継の経緯を中心にお聞きする。

◎(前編)「日本の1次産業を守るバーベキュー」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52962

生産から販売までのトータルプロデュースを志す

 神奈川県藤沢市ののどかな田園地帯。彼の母校、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)に程近いところで、宮治勇輔氏と弟の大輔氏は養豚業を営んでいる。

みやじ豚・代表取締役の宮治勇輔氏

 しかし宮治氏は、最初から養豚農家を営んでいたわけではない。

 1978年に生まれた彼は、家業を継ごうという気持ちもなく、1997年、慶應義塾大学総合政策学部に入学。2001年には、大手人材派遣会社のパソナに入社して、第一線のビジネスパーソンとして多忙な日々を送っていた。そんな彼が、家業の養豚業を継ごうと決断するに至るまでには、2つの契機があった。

「最初の契機は大学時代です。たまたま父が育てた豚がコンテストに出て肉になって戻ってきて家にあったので、友人たちを招いてバーベキューパーティーをしました。すると、友人たちが口々に『こんなにうまい豚肉は食べたことがない』って言ってくれたんですよ。『うちの豚ってそんなにうまかったのかぁ』と感動したのもつかの間、『この肉、どこに行けば買えるの?』って訊かれてハッとしたのです」