マレーシアでは、国会解散を前にすでに事実上の選挙戦が突入している。春節の年賀を通じ、街中には各政党の選挙を目論んだポスターが貼られ始めた。今回、政敵だったマハティール元首相と長年の敵対の歴史に封印、ナジブ首相打倒でマハティール氏と”共闘する”(実際には選挙には出られないが)ことを決断した獄中のカリスマ野党指導者、アンワル・イブラヒム元副首相=中央=のポスターも人々の目にとまる(クアラルンプール、筆者撮影)

 自ら設立に関与した出身政党を“ぶっ壊す”ために、92歳の政界を退いた老兵が再び、立ち上がった。

 5年に1回開かれるマレーシアの総選挙(下院選挙)は、「4月6日解散、5月4日か5日に総選挙」(マレーシア政府筋)を軸に最終調整に入った。

 20世紀を代表する東南アジア最後の独裁開発指導者、マレーシアのマハティール元首相が、野党連合「希望同盟」の首相候補として、次期総選挙に出馬することになった。

当選すれば世界最高齢の元首に

 かつて自らが会長を務め、さらに後継者として選んだナジブ首相が率いる統一マレー国民組織(UMNO)を母体とする与党連合「国民戦線」(BN)に対抗する。

 首相に返り咲けば、世界で「最高齢の国家元首」になる。

 いまのところ、独立以来60年以上を経て、政権を握ってきた与党連合の優勢が伝えられている。しかし、その足元は問題だらけだ。

 地方へのバラマキ予算による不公平な優遇政策に加え、米国司法省が民事訴訟を起こすなど(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47506https://www.justice.gov/archives/opa/page/file/877166/downloadhttps://www.youtube.com/watch?v=_gBNuJCGezY&app=desktop)、世界の6カ国以上で捜査が進められている政府系ファンド「1MDB」に絡む巨額資金正流用の世紀の汚職疑惑。

 ハリウッド映画やアカデミー賞受賞俳優のディカプリオやスーパーモデルのミランダ・カーも巻き込んだこの汚職疑惑への痛烈な批判は、都市部を中心に収まる様子はない。それどころか政権交代を求める声が最高潮に達している。

 これについては、日本のメディアとして第1報を本コラムで初めて報道した(参考=http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43250http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50575)。また「週刊新潮」に解説記事も掲載した(参考=https://www.dailyshincho.jp/article/2017/07170559/?all=1)。

 かつて、英国の植民地であったマレーシアだが、ナジブ首相のアキレス腱となり得る45億ドル以上(米司法省捜査)にも達する巨額の公的資金の不正利用の世紀のスキャンダルを暴いたのは実は、英国のメディア。